政党システムのイデオロギー的分極化は、世界でどのように、なぜ異なっているのだろうか?アメリカの民主・共和の二大政党間のイデオロギー的分極化が深刻化し、政治に停滞をもたらしていることは広く知られている。しかし、既存の膨大なアメリカの分極化研究は、分析対象をアメリカ一国に集中して、理論的・歴史的に分析する一方で、比較の視野からアメリカの分極化を他国の分極化と国際比較する研究は皆無に等しかった。応募者はサーベイデータの計量分析の方法論的研究から左右のイデオロギー対立を国際比較可能な尺度で測定することにすでに成功した。この方法とデータを用いて、世界各国の分極化がどの程度異なり、アメリカの政党の分極化を世界の比較の中に位置付け、さらに分極化の程度の違いをもたらす要因も比較論的に明らかにした。 政党政治のイデオロギー的分極化という現象をアメリカも含めて国際比較をするのが本研究の最大の目標である。筆者は、有権者サーベイを用いて国際比較可能な、有権者のイデオロギー的位置の推定に成功した。より具体的には1)有権者のイデオロギー的分極化の国際比較、2)政党のイデオロギー的立場の分極化の国際比較、3)アメリカの50の州レベルの分極化の地方政治比較、という三つの観点から、アメリカの分極化「外」と「内」から分析した。前二者は、アメリカとアメリカ以外の国家との国際比較による分極化の分析である。具体的には、先述した多国間の有権者サーベイを用いた政党の分極化と有権者の分極化を従属変数とし、国家レベル、政党レベル、個人レベルという三つのレベルの要因という独立変数からエリートと有権者双方の分極化を分析し、アメリカをその中に位置付ける。このことにより、分極化が特定の国家や社会構造から生ずるのか、それともエリートや政党の行動、ないしは有権者や大衆レベルから生じる現象なのか、データから明らかにした。
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