研究課題/領域番号 |
20K13412
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石野 敬太 早稲田大学, 政治経済学術院, 助手 (40844519)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アリストテレス / 『政治学』 / 政治的動物 |
研究実績の概要 |
「人間は自然的に政治的動物である」(Pol. I 2, 1253a2-3)というアリストテレスの人間規定は、彼の政治哲学を熟議民主主義に親和的な思想として描き出そうとする論者や、共同体主義や市民的共和主義の思想的源流として理解する論者にとって導きの糸となってきた。その理由は、「政治的動物」という人間観が、言語を介した市民間の熟議を中核とする「政治的支配」を含意すると理解され、市民の政治参加の内在的価値を認識するうえで有益な視点を提供すると考えられてきたことにある。 2021年度の研究では、「政治的動物」から導き出されてきたこのようなアリストテレス政治哲学における「政治」の理解を批判的に検討し、それとは異なる解釈を提示した。具体的には、『動物誌』における議論を下敷きにしながら、『政治学』において「政治的動物」が言及される第一巻第二章を読解することで、後者のテキストに立法家と市民の間の政治的関係を読み込む視座を提示し、それが『政治学』第三巻第十一章における「多数者の知恵」に関する議論に組み込まれていることを指摘した。さらに、立法家と市民の間の政治的関係が『ニコマコス倫理学』第六巻第八章における「思慮」の分類と第十章における「理解力」の分析を反映していること、そしてそれが法に即した「議決」の執行というかたちで具現化することを論証した。そのうえで、『弁論術』での議論を参考にしながら、立法家と市民の協働をより広い政治的文脈に位置付け、かくして人間のみが有する「言葉」の発露についての解釈を提示した。 当該年度の研究を通して、「政治的動物」という人間観が立法家の思慮に即した政治的な勧奨と市民の理解力に即したその政治的判断を中核とする政治を含意することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、日本語による研究論文および英語による研究論文が国内・国外の学術誌に採用された。これらの研究論文と関連する更なる『政治学』や『ニコマコス倫理学』に関する研究も進んでおり、具体的成果として順次発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、国内外の有力な学術誌に論文を掲載できるように研究成果をまとめることを主眼としたい。とりわけ、これまでの研究成果と関連づけた上で、アリストテレスの『エウデモス倫理学』第八巻の研究を進める予定である。また、アリストテレスの幸福論をテキスト内在的に考察することが課題になっているので、この点に関する研究成果も並行してまとめるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内学会に参加する予定であったが、コロナ禍のためオンライン開催となり、出張費として使用することがなかったため。次年度の学会参加費として使用するつもりである。
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