研究課題/領域番号 |
20K13418
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
谷口 友季子 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター動向分析研究グループ, 研究員 (10826077)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 権威主義体制 / 抗議行動 / 選挙 / 野党 / マレーシア |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、権威主義体制における政治制度を通じた政治参加と、デモなどの制度外(投票外)の参加がどのように相互的に影響しているのかを明らかにすることである。本研究では、反体制派や野党、市民といった体制外のアクターが体制に異議申し立てを行う手段の選択に着目し、マレーシアにおける政治制度と市民社会の相互作用のメカニズムを明らかにする。 先行研究では、選挙制度が機能している体制では制度を通じた政治参加が促進され、選挙など民主的な制度の機能が不十分な体制では、デモや暴動などの制度外の手段が取られると論じられきた。しかし、この議論は民主主義と非民主主義の間に位置する体制の状況を十分に説明できていない。こうした体制では野党の参加を許容した選挙が行われる一方で、市民による抗議活動も活発に発生しており、体制外アクターは必ずしも「投票かデモか」という二者択一の選択に迫られるわけではない。その典型的な事例がマレーシアである。マレーシアは2018年まで与党連合の国民戦線が60年以上政権を握っており、一定程度自由な選挙によって大衆の支持を獲得してきた一方、政治的、市民的自由の抑圧も行われてきた。しかし、2000年代後半以降、選挙制度改革運動の隆盛によって10万人以上を動員するデモがたびたび生じていた。これらのデモは直接的な体制転覆を志向するのではなく、むしろ選挙における野党連合形成や野党の支持拡大に大きな影響力を持った。つまり、大衆運動が政治制度や選挙の機能不全の表れではなく、選挙を通じた政治参加との相互作用が存在しうることを示唆している。このメカニズムを明らかにするため、マレーシアの政治家や市民活動家へのインタビュー調査やサーベイ調査を実施する。 2022年度は、現地で刊行されている新聞データや市民社会に関する統計データを用いたデータセットの構築を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本課題の遂行上、現地での調査が不可欠であるが、新型コロナウイルス感染症流行の影響から長らく実施できなかったため、当初計画していた研究を開始できていない。また2022年度は、代表者の産前産後休暇および育児休暇により、研究の中断を余儀なくされた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、引き続きデータ分析を進める一方で、現地でのインタビュー調査や文献調査の準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者の産前産後休暇および育児休暇により、研究の中断が生じたため。今年度は、主に現地調査に伴う渡航・滞在費用や現地でのRAの雇用への支出を予定している。
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