研究課題
若手研究
国連総会は、科学技術開発を促す決議と規制を試みる決議を繰り返し採択してきたものの、促進すべき科学技術開発と規制すべき科学技術開発を明確に区別していない。これら決議の重複や矛盾から生じる問題を解決するために、国連が時代によって取り組みの方向性を変化させながら対応してきたことが、国連設立時からの国連総会文書の調査の結果、明らかになった。1990年代には、国際的規範作成を促進しようと試みるが、2010年代には、多様な非国家主体に呼びかけ、それらとの協力を進めようと試みている。
国際関係論
国際政治における科学技術開発についての既存の研究は、個別の科学技術がもたらす影響の考察が中心であった。科学技術開発に関する動向を、国連総会の記録をもとに、長期間にわたり俯瞰的に考察したことは、国際的議論の流れを包括的に把握することに貢献する。また、科学技術開発のような国家のパワーに直結する課題に国連がどのように取り組んでいるのかについて得た知見は、不安定な国際情勢を背景に、多国間協力が困難になっているなか、国境を越えた課題解決のために、国際制度が果たすことのできる機能についての考察に貢献する。