研究課題/領域番号 |
20K13428
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
大槻 一統 東京都立大学, 大学教育センター, 准教授 (00779093)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 核抑止 / 大量破壊兵器 / 戦争 / ゲーム理論 / サーベイ実験 |
研究実績の概要 |
近年の核新興国の台頭と、ウクライナにおける戦争とロシアによる核兵器使用の示唆も相まって、核抑止論に関する議論が、アカデミックな舞台でもメディアにおいても活発化している。そのため、今年度はまず関連文献の整理・アップデートに努め、文献レビューの更新作業を行った。また、過年度に構築した数理モデルの実証的含意とサーベイ実験の結果の整合性を統計分析により確認し、論文にまとめる作業を行った。
上記の分析により、核兵器保有国の政治体制や、国家間紛争で争われる財により核抑止の頑健性は影響を受けるという結論が得られた。つまり、核による抑止力は紛争当事国の政治体制の組み合わせと紛争の目的に依存する。「核兵器の使用(報復)に関する信憑性の根拠は何か」という本研究における重要な問いに対して、紛争当事国の政治体制と、紛争で争われる政治・経済的資源という二つの側面から解答を示すことができた。
論文は国際学会(International Studies Association West Annual Conference)にて発表し、討論者及びオーディエンスより有益なフィードバックを得ることができた。論文は校正作業の上、英文査読誌への掲載を目指している。研究開始当初は核抑止理論の精緻化という、ともすればやや抽象的な学問的意義を強調した研究としてスタートしたが、非民主国による核兵器使用の可能性がアクチュアルな安全保障問題として浮上し、本研究の社会的重要性は増しているように思う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標としていた理論部分の完成、実験と統計分析、国際学科による発表を全て達成している。パンデミックにより学会参加やアーカイバルリサーチが遅滞しているが、それを差し引いても研究の進捗はおおむね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
国際学会にて発表した論文一本を英文査読誌に掲載するため、投稿及び査読レビューを受けた修正作業を随時行う。また、パンデミックの状況次第ではあるが、核実験及び他の大量破壊兵器に関するアーカイバルリサーチを実施する。今後は、(1)国家間の戦略的相互依存関係において、核兵器使用の信憑性にバリエーションが存在する状況で核抑止はいかに成立しうるか、また、(2)核抑止が機能しない状況での戦争・兵器選択が大きな研究テーマとなる。
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次年度使用額が生じた理由 |
パンデミックの影響が継続しており、国際学会にはオンラインで参加した。よって、今年度使用予定だった旅費と宿泊費を次年度の出張に充てたい。次年度も海外出張の見通しが立たない場合、残余額を実証研究を充実させるための費用とする。
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