現在進行中のロシアとウクライナ、及びイスラエルとパレスチナの間の紛争は、核兵器の脅威を我々に再認識させただけでなく、核保有国と非核保有国の間の紛争におけるその役割の曖昧さを再確認させた。世界最大の核保有国ロシアはウクライナ侵攻に際して包括的核実験禁止条約の批准を撤回したが、実際の核兵器の使用に関してはあまり現実的に受け止められているとは言えない。本研究は、これらの軍事衝突のように、テリトリーが争点になるような紛争においてその土地が持つ政治経済的価値がいかに核抑止に影響を与えうるかを、また、核の感覚的脅威とその実際の使用の信憑性の間の乖離を分析するものであり、現代の戦争を考察する上で小さくない貢献があるものと考えられる。
昨年度までに論文は概ね完成し、学会発表でのフィードバックも充分に得ていたため、今年度は校正・リバイズと英文査読誌への投稿に集中した。また、American Political Science Association Annual Conference等の学会の参加を通し、今後の核抑止及び大量破壊兵器に関するリテラチャーの方向性を確認することができた。さらに、関連する専門家とのネットワーキングを通じて、最新の研究動向や政策に関する洞察も深めることができた。残念ながら論文の掲載には至っていないが、今後も投稿とリバイズを継続していく計画であり、その過程で得られるフィードバックや新たな知見を論文に反映させることを目指している。加えて、他の関連分野の研究者との、特に紛争や暴力の倫理性に関するコラボレーションも積極的に模索していく予定である。
|