研究課題/領域番号 |
20K13429
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
志田 淳二郎 東京福祉大学, 留学生教育センター, 特任講師 (90782318)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ウィリアム・クリントン政権 / NATO東方拡大 / アメリカ外交史 / 国際関係史 / 国際関係理論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、冷戦後の旧ソ連圏秩序再編をめぐって、ウィリアム・クリントン政権がどのような外交を展開したかを実証的に明らかにすることである。旧ソ連圏秩序再編をめぐるクリントン外交については、冷戦後の安定的な米露関係の模索、ウクライナの非核化問題、そしてNATO(北大西洋条約機構)東方拡大(ハンガリー、チェコ、ポーランドのNATO加盟)などの諸課題があった。 2020年度は、当初の研究実施計画通り、これらの諸課題に関するクリントン外交についての公刊一次文献として、当時の政策決定者の回顧録の収集を行った。また、国際関係理論や外交史の視点に立った冷戦後の米露関係、ウクライナの非核化問題、NATO東方拡大をテーマにする二次文献の収集・解析作業についても、滞りなく遂行することができた。2020年度は、旧ソ連圏秩序再編をめぐるクリントン外交の「前史」にあたるジョージ・H・W・ブッシュ政権期のヨーロッパ・ユーラシア外交に関する研究書籍および研究報告を発表することができた。また、NATO加盟を果たした中東欧諸国をめぐる安全保障環境についての分析も行った。これらの研究実績は、本科研のテーマであるクリントン外交を歴史的文脈に位置付ける上で、必要不可欠な作業である。具体的な研究実績は以下の通りである。 ①単著『米国の冷戦終結外交―ジョージ・H・W・ブッシュ政権とドイツ統一』(有信堂、2020年) ②報告「中東欧における『多元的民主主義』と既存の国際秩序への影響」グローバル・ガバナンス学会第13回研究大会(2020年11月15日) ③報告「冷戦終結期のアメリカ外交・安保政策再訪―核・同盟・ヨーロッパ新秩序」西洋近現代史研究会1月例会(2021年1月23日)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2020年度はおおむね順調に研究活動を遂行することができた。当初の計画通り、2020年度は、旧ソ連地域再編をめぐるクリントン外交、具体的には、冷戦後の米露関係の安定、ウクライナの非核化問題、NATO(北大西洋条約機構)東方拡大に関する文献資料の収集・解析・データベース化を中心に研究を進めることができた。こうした公刊一次資料のみならず、国際関係理論の視点に立ったNATO東方拡大をめぐる研究論文の大部分を収集することができた。 こうした文献調査を主とする2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大による社会情勢の変化に大きく左右されることなく、円滑に研究活動を遂行することができた。文献調査により、以下3点について、解明できた。 ①リアリズム(現実主義)とコンストラクティビズム(社会構成主義)の間で行われた国際関係理論の「第四次論争」は、冷戦終結をめぐるテーマだけでなく、NATOの存続および東方拡大をめぐる議論においても継続していたこと。②冷戦終結過程から新生ロシアが誕生するに至るまで、早い段階からハンガリー、チェコ、ポーランドなどの中東欧諸国は、アメリカ主導の同盟システムであるNATO加盟を目指していたこと。③クリントン大統領の個性や世界観が外交の駆動力となっていたというよりは、むしろ専門性を有するNSC(国家安全保障会議)、国務省、国防総省等の実務レベルで、旧ソ連圏秩序再編をめぐる外交が策定されていたこと。 今後は、こうした公刊一次資料を基に判明した諸点を、アメリカの各種公文書館に点在する未公刊一次資料を収集・解析し、クロスチェックをすることで、本テーマの実証性を高めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の主たる研究計画として、アメリカの各種公文書館に点在するクリントン政権期の米露関係、ウクライナの非核化問題、NATO東方拡大に関する未公刊一次資料を収集することが挙げられる。新型コロナウイルスの感染拡大状況によるが、2021年度の夏期および春期休業期間中にアメリカを訪問し、当初の年次計画通り、複数の公文書館で資料収集活動を行う予定である。 ただ新型コロナウイルスの感染拡大状況にとっては、国外での文献調査を遂行できない事態になることも容易に想定できる。そうした際には、アメリカの各種公文書館にオンライン上で直接問い合わせを行い、閲覧・収集希望の文献について、複写および郵送の手配を依頼することで、新型コロナウイルスを原因とする国外に直接赴いた形での研究活動の代替措置を講ずることを検討している。 本年度予定しているアメリカの未公刊一次資料の収集・解析・データベース化を行うことで、本研究の実証性がさらに高まることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度をまたぐ形での所属研究機関の移動準備等により、2020年度配当分の資金を全額使用することができなかった。2020年度残余分については、2021年度分に合算し、物品購入費などに充当することを検討している。
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