研究課題/領域番号 |
20K13433
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
湯澤 奈緒 (下谷内奈緒) 津田塾大学, 学芸学部, 講師 (20823884)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歴史認識 / 責任追及 / 和解 / 植民地支配 / 国際秩序 |
研究実績の概要 |
令和2年(2020年)度は歴史認識をめぐる責任追及が国際的にどのような形で行われているのかを把握し、それらの動きを後押ししている国際的、国内的要因について考察した。新型コロナウイルス感染症の影響により、聞き取り調査や現地調査は行わず、文献調査を中心に研究を進めた。 責任追及は、政府が相手国政府に公式の謝罪や損害賠償を請求したり、真実究明委員会を設置する場合もあるが、圧倒的多数は被害者が謝罪と補償を求めて国内裁判所に訴える民事裁判の形態をとっている。1990年代以降に過去の戦争や数世紀前の植民地支配の責任を問う動きが広がっている背景には、人権規範の浸透や民主化の進展、旧植民地諸国の経済発展による相対的パワーバランスの変化などがあげられるが、多くの訴訟では個人が国際法上、賠償請求権を有するのかが問題となった。そのため国際刑事裁判所(ICC)の被害者賠償制度についても調査した。研究成果は令和3年(2021年)5月に予定されている日本平和学会の春季研究大会で報告する予定である。 また、『法律時報』(日本評論社)の「武力紛争時の違法行為に対する刑事法的対応」に関する企画特集に参加し、移行期正義における刑事処罰の位置づけについて考察する論文を準備した(2021年6月号に掲載予定)。この過程で主に国際法学者から構成される研究会に継続的に参加し、刑事処罰の意義や和解との関係について意見交換できたことは有意義であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の影響によりインタビューや現地調査は行えなかったものの、文献調査により歴史認識をめぐる責任追及の全体像の解明とその要因について考察を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
個別の事例について聞き取り調査も取り入れながら理解を深め、「和解」のありかたについて考察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年(令和2年/2020年)度は新型コロナウイルス感染症の影響で、予定していた海外での聞き取り調査を行わなかった。今後の状況にもよるが、次年度以降の実施を検討したい。また本年度前半は勤務先大学でのオンライン授業対応等のため研究時間を十分確保することができず、当初の研究計画では秋に予定していた研究報告を翌年度に延期することにした。
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