研究課題/領域番号 |
20K13433
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
湯澤 奈緒 (下谷内奈緒) 津田塾大学, 学芸学部, 講師 (20823884)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歴史認識 / 責任追及 / 和解 / 植民地支配 / 賠償 |
研究実績の概要 |
令和4年(2022年)度はこれまでに行ってきた、①歴史認識をめぐる責任追及の国際的動向とその要因、②責任追及を和解に繋げるための条件についての取りまとめを行った。 ①については、1990年代以降に世界各地で行われてきた過去の戦争や数世紀前の植民地支配の責任を追及する動きを分析し、その大半が被害者個人が相手国や第三国にある法律事務所を介して政府や企業を提訴する賠償請求訴訟の形態をとっていることを明らかにした。そしてその背景として、冷戦終結とともに国家間の戦略的妥協としての和解を支えた構造的要因の消失したこと、個人による責任追及を可能にする条件として、民主化、国際人道法の発展と国際的な被害者の権利の伸長、新独立国の経済成長という3つの条件があったことを指摘した。 ②については過去の植民地支配や戦争の責任を追及する訴訟のうち、原告に有利な判断が出された例外的な2つの事例(インドネシア独立戦争期のオランダ軍による住民虐殺[ラワグデ事件]に関するオランダ・ハーグの地方裁判所判決[2011年]と、ケニア独立闘争[マウマウ団の乱]時の拷問被害者からの訴えに裁判所の管轄権と審議入りを認めたロンドン高等法院の判断[2011年、2012年])を、対日戦後補償裁判と比較分析することで、加害国の側で社会の広範な関心を喚起する出来事の有無が、広範な国民的議論を喚起し社会的な和解に繋げるうえで重要な要因となっていることを明らかにした。 研究成果は『平和研究』第58号(2022年)に「植民地支配の責任追及と和解」として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も新型コロナウィルス感染症の影響により予定していた現地調査が行えなかったことが課題として残るが、文献調査やオンラインでの情報収集により歴史認識をめぐる責任追及と和解に向けた国際的動向の解明を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
被害者賠償の歴史的・国際的動向の分析を進めつつ、和解の意義や条件について考察するためのより詳細な事例研究を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年(令和4年/2022年)度も新型コロナウイルス感染症の影響で、予定していた海外での調査を行わず、主に文献調査とオンラインによる情報収集によって研究を進めた。次年度は(状況にもよるが)現地調査による個別事例研究の掘り下げを検討している。
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