研究課題/領域番号 |
20K13435
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
冨永 靖敬 法政大学, 経済学部, 准教授 (40779188)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 国内武力紛争 / 和平プロセス / データセット構築 / 計量政治 |
研究実績の概要 |
本研究は,複数の反政府勢力が活動する国内武力紛争を対象に,政府による特定武装組織の和平プロセスからの排除の論理を明らかにすることを目的とする。研究にあたっては,既存のデータに加え,公開情報から必要なデータを収集,コーディングすることを通して,仮説の統計的な検証を可能にする。
2021度は,本研究課題を遂行するにあたり,2点の変更をした。第一に,本研究の主眼である「特定の武装勢力の和平プロセスからの排除」を「政府による特定の武装勢力に対するテロリスト指定」へと微調整・具体化した。その理由として,2021年度の調査の結果,和平プロセスにおける政府の特定組織に対する意図的な排除の事実確認が困難である点,また「テロリストとは交渉しない」という政府の論理により,テロ指定を和平プロセスからの排除に代替可能と判断した点を挙げることができる。第二に,上記修正後の研究内容において,新たに海外大学の研究者(カンザス大学助教Nazli Advan)との共同研究を行うこととした。当該研究者は,武力紛争に関連する十分な研究業績が既にあり,また本研究課題に類似した研究を行なっていた点から,共同で研究を行うことが最善と共に判断をした。本研究課題においては,既に台湾国立政治大学のChia-yi Lee准教授とも共同研究を行なっているが,科研費の規定上は,共に資金の分担を伴う共同研究者ではなく,協力研究者という位置付けにある。
上記の研究課題において,2021年度は,既に政府による特定組織に対するテロリスト指定のデータセットの構築を行い(Journal of Peace Researchでの掲載許可),現在,同データセット,またウプサラ大学が収録する武力紛争データセットなどを用い,テロリスト指定の論理の解明に加えて,和平プロセスへの影響の分析を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の実績報告にて記載した通り,本研究は,コロナ禍の影響により,研究の開始を一年遅らせる判断をした。したがって,実質的には2021年度が研究初年度と位置付けている。その中で軽微な研究の修正は行なったものの,データセットの構築に加え,テロリスト指定の論理の解明,和平プロセスへの影響,について2本の論文の作成が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,現在既に完成しつつある政府による「テロリスト指定」の論理の解明についての論文の完成と出版を目指す。また,テロ指定が和平プロセスへ及ぼす影響についてのメカニズムの解明とともに,データを用いた実証を行い,国際学会での研究発表を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
上述の通り,コロナ禍の影響を踏まえ,2020年度はすべての研究費の執行を断念した。したがって,2020年度支出予定であった予算の繰越が継続している。また,コロナ禍の影響により,国際学会への参加が不可能であった点から,2021年度も予算の繰越を行わざるを得ない状況となった。2022年度は,既に複数の国際学会への参加が予定されており,またデータ処理に関連するアシスタントへの人件費の支出も予定している。
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