研究課題/領域番号 |
20K13436
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
清水 謙 立教大学, 法学部, 特定課題研究員 (60846202)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 冷戦史 / スウェーデン政治外交史 / スウェーデンの西側軍事協力 / NATO / 政軍関係 / オーロフ・パルメ / COVID-19 |
研究実績の概要 |
本年度は昨年に引き続き、スウェーデンのNATO加盟に向けた外交交渉などの動向に着目しながら研究を行った。同時に、冷戦期におけるスウェーデンの西側軍事協力のスウェーデン国内の行政上の仕組みを明らかにした。 それらの成果としては「スウェーデンのCOVID-19対策の「独自路線」の構造について-集団免疫、行政の独立性、さらに西側軍事協力とNATO加盟申請」岩崎正洋編著『コロナ化した世界:COVID-19は政治を変えたのか』(勁草書房、2024年)にまとめた。事例はCOVID-19であるが、スウェーデンの「独自路線」は行政機関の独立性に由来することを明らかにしたことは、西側軍事協力を考える点で大きな手がかりとなる。スウェーデンでは軍も行政機関に分類されるため、「行政の独立性」によって、軍さえも政府と議会の制約を受けないこととなる。この「行政の独立性」はスウェーデン独特の仕組みであり、軍事戦略や作戦などの立案については軍の専権事項であるため、「裏の同盟」が可能であったという不可思議に思われるような要因を析出した。同研究をさらに進展させて日本大学法学部政経研究所にて、「スウェーデンのCOVID-19対策-独自路線、集団免疫、そしてNATO加盟申請までに至る隠れた論理」として研究発表を行った。 そのほか『立教アメリカン・スタディーズ』(45号)にて、「裏の同盟」の路線を継承しながら「正式加盟以外であれば何でも行う」とする、いわゆる「フルトクヴィスト・ドクトリン」について触れた上で、1990年のドイツ統一に対するスウェーデンの対応と東ドイツとの「紐帯」の解消などを論じた。 「スウェーデン・モデル」とも呼ぶべき独特な統治形態が軍を中心とした西側軍事協力を可能にさせた構造を明らかにしたことは、今後のこの分野における研究に広がりをもたらす大きな前進的成果と確信する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は前年度に行ったスウェーデンの国立公文書館等で収集した外交文書や、文献資料などを基に研究を進めた。 研究実績の概要に記載した通り、本年度は西側軍事協力に至る行政上のメカニズムの解明に注力した。これによって「表の中立、裏の同盟」が時代の趨勢によるだけではなく、西側軍事協力を可能にした独特の行政構造の存在を析出したことから、おおむね順調に研究実施計画が進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き史料収集と二次文献の収集を行い、スウェーデンと西側との軍事協力関係のメカニズムを精緻化していく。そして、その中でのオーロフ・パルメの果たした役割をさらに具体的に明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の初年度に新型コロナウイルスのパンデミックが起こったことから現地での史料調査が不可能となった時期が長く続いた。そのため積み上がった分が次年度に繰り越された。その分、史料収集の規模を拡大し、その調査費用に充てる予定である。
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