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2022 年度 実施状況報告書

EUによる基本権侵害とその匡正――《国際機構間異議申立》の実証研究――

研究課題

研究課題/領域番号 20K13437
研究機関青山学院大学

研究代表者

大道寺 隆也  青山学院大学, 法学部, 准教授 (70804219)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード欧州連合 / 難民 / 避難民 / 出入国管理 / テロリズム / 人権
研究実績の概要

2022年度は、(1)欧州連合(EU)の出入国管理政策と、(2)EUと欧州審議会(CoE)のテロ防止措置を分析した。(1)については、次の2点の検討を行った。第一に、EU出入国管理政策における「人道主義」について検討した。「人道主義」とは、端的に言えば、困難にある人々を助けて「あげる」という「慈善」の思想である。しかしそれは「義務」ではない以上、助けて「あげる」側は、誰を助けるかを恣意的に決定できる。この恣意性こそがEU出入国管理政策の特質であり、例えばウクライナ戦争によって生じた避難民を助けつつ、例えばシリア難民は排除するといった不平等な出入国管理が行われている。この点は各種研究会で報告したほか、2023年内に青山学院大学法学部の紀要『青山法学論集』で発表する。第二に、EU域外出入国管理政策においてEU以外の国際機構が果たす役割を検討した。従来EUは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や国際移住機関(IOM)を「下請け」として利用していたが、近年では、UNHCRやIOMが連名でEUを非難する「国際機構間異議申立」の動きが見られることを明らかにした。この点については、国際ワークショップ “Externalisation of Migration Controls and Accountability Challenges in International Law”(2023年5月・オランダ)で報告したのち、海外雑誌に投稿する。(2)については、CoE職員にインタビューする機会を得たので、複数回、CoEのテロ防止措置の最新の動向と、同分野におけるEUとの協力関係についてヒアリングを行った。現在、その成果を整理し、国際学会 “International Conference for Europeanists”(2023年6月・アイスランド)で報告する準備を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度は、本研究が行う2つの事例研究(EU出入国管理政策とテロ防止措置)の両方について、程度の差こそあれ、進展が見られた。そのため、総合的に「おおむね順調に進展している」と評価した。EU出入国管理研究については、予定通りか、それ以上の進展が見られる。すなわち、前述した通り、「人道主義」の理論と実践に関する研究を行ったほか、それと密接に関連するトピックとして、EUのウクライナ避難民対応についての批判的検討を行うことができた。成果発表としては、2022年度中に2本の査読付き論文(『日本EU学会年報』および『国連研究』所収)を発表したほか、2023年度にも、国内外で複数の報告を実施し、論文も投稿・発表する予定である。一方、テロ防止措置の研究は、EU出入国管理政策研究に比べると遅れており、成果物の発表にはまだ至っていない。ただし、その遅延の背景には、2022年度、予期せぬ形で職員にインタビューする機会を得たことや、CoEのテロ対策に関する大枠の方針が更新されたことといった要因があるため、研究遂行そのものに重大な支障を発生しているわけではない(むしろ、予定より早く聞き取りを実施できた点は成果だと言える)。

今後の研究の推進方策

2023年度は、本研究課題の最終年度であるため、これまでの研究成果の発表に力を入れる予定である。いずれも上述した点であるが、EU出入国管理政策については、5月の国際ワークショップ “Externalisation of Migration Controls and Accountability Challenges in International Law” における報告が決定している。このワークショップで報告されたペーパーは、国際的査読誌の特集号として刊行される可能性があるため、いわゆるR&Rの作業を行うことが必要となる。さらに、先述した「人道主義」概念の問題性についての検討を進め、国内学会における報告の機会を確保したいと考えている。また、テロ防止措置については、6月の“International Conference for Europeanists” における報告が決定している。同学会で得られたフィードバックをもとにして報告ペーパーを修正し、EU・欧州統合に関する国際的査読誌に投稿したいと考えている(なお、投稿先としては、現在のところ Journal of European Public Policy や Journal of European Integration などを検討している)。さらに、そうした研究の実証性を一層高めるため、8月~9月にかけて渡欧し、ベルギー・ブリュッセルやフランス・ストラスブール等で、EU機関(欧州委員会など)やCoEなどの職員へのインタビュー調査、ならびに当地の研究者とのネットワーキングを実施する予定である。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染症の影響のもと、当初予定していた海外出張が実施できなかったからである。現在は状況が改善し、海外出張が可能になったため、ヨーロッパの複数都市(ブリュッセル、ストラスブール、ジュネーブなど)に渡航し、フィールドワーク(国際機構の職員に対するインタビュー調査等)を実施する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] EUによる「押し返し(pushback)」政策の動態――EU立憲主義の可能性と限界――2022

    • 著者名/発表者名
      大道寺隆也
    • 雑誌名

      日本EU学会年報

      巻: 42 ページ: 142-161

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 国際移住機関の変容と人権――国連「関連機関」化の規範的含意と実践的影響――2022

    • 著者名/発表者名
      大道寺隆也
    • 雑誌名

      国連研究

      巻: 23 ページ: 103-125

    • 査読あり
  • [学会発表] Inter-organizational approach to accountability: EU-IOM-UNHCR relations and human rights of people on the move2023

    • 著者名/発表者名
      Ryuya Daidouji
    • 学会等名
      Externalisation of Migration Controls and Accountability Challenges in International Law
    • 国際学会
  • [学会発表] EU-CoE Relationship on Terrorism Prevention: Cooperation, Competition, and Contestation2023

    • 著者名/発表者名
      Ryuya Daidouji
    • 学会等名
      Twenty-Ninth International Conference of Europeanists
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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