研究課題/領域番号 |
20K13439
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小山 淑子 早稲田大学, 留学センター, 准教授(任期付) (50800827)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 治安部門改革 / 規範伝播 / SDGs / ジョージア / コンゴ民主共和国 / 平和構築 / 国連 / 国際協力 |
研究実績の概要 |
4ヵ年の研究計画の大まかな計画として、初年度にジョージアの事例研究(現地調査を含む)、2年目にコンゴ民主共和国(現地調査を含む)、3年目に研究成果の執筆・発表、最終年度に国際共同プロジェクトの発足を予定している。しかし、初年度初頭からのコロナ禍の影響によりジョージアでの現地調査を中止せざるを得なくなったことに伴い、研究計画を部分的に見直した。具体的には、ジョージアでの現地調査を実施することに替え、2年目に実施予定であったコンゴ民主共和国の事例研究を、文献収集・精査と言説分析の作業を中心に、前倒しで開始した。コンゴ民主共和国の事例に関する研究成果は、国際安全保障学会2020年度年次大会(2020年10月30日、オンライン開催)にて発表した。 このコンゴ民主共和国に関する事例研究では、ジョゼフ・カビラ前大統領政権時(2001年~2018年)に着目し、過程追跡(process tracing)の手法を用いて治安部門改革における取組の政策策定過程の分析を行った。文献収集・精査と言説分析は、主にドナー国や国際機関による取組進捗報告書、国連・研究機関および人権NGOによる報告書、コンゴ民主共和国政府の関連省庁トップによる声明を対象に行った。発表内容に関しては、規範研究および治安部門改革の専門家より非常に有益なコメントを得て、当研究の理論面での課題を明らかにすることができた。 ジョージアの事例研究に関しては、ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)の研究者の協力を得て、研究成果の一部を英文編著書の一章として発表することとなった。当初は2020年度内に出版予定(英語)であったが、コロナ禍の影響により出版が2021年度へとずれ込んだ。現在、2021年秋の出版を目指して、準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である2020年度は当初ジョージアの事例研究に係る現地調査を予定していた。しかし、コロナ禍によって現地調査を中止せざるを得なくなったため、ジョージアでの現地調査を実施することに替え、2年目に実施予定であったコンゴ民主共和国の事例研究に関する言説分析を前倒しして実施している。 また、中止となったジョージアでの現地調査に替えて行ったジョージアとコンゴ民主共和国における規範伝播に関する文献収集・文献精査の結果、当初の研究計画で着目している治安部門改革に加え、持続可能な開発計画(Sustainable Development Goals: SDGs)推進取組が、当研究における理論構築に資することが新たに明らかになった。そのため、これまで治安部門改革に関して行っていた「ローカル・アクターと国際アクターとの間の関係性や相互作用に焦点を当て、両者がお互いにどのような影響を与えたかという因果的過程の追跡および検証」を、SDGsに関しても実施した。2020年10~12月には、関連する国際機関関係者にオンラインで聞き取り調査を実施し、研究成果を執筆した。2020年度以降も引き続き、研究成果を国内外の学会報告および論文出版などで公表し、研究を進める上での課題点を精査することとしたい。具体的には、治安部門改革およびSDGsに関して規範伝播における国内外のアクターの関係性と相互作用について検証を続け、より精緻な理論的検討を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
研究内容については、2020年度の研究活動では対象としなかった事例対象国の政府や市民社会などの国内アクターによる取組に焦点を当てて調査分析を進める。これにより次年度である2022年には、初年度に着目した国際アクターとこれら国内アクターとの間の関係性や相互作用の分析に着手することが可能となる。研究成果の発表については、今後も引き続き国内外の学会や出版を通じての発信を継続していく。 今後の研究方法については、コロナ禍の影響を加味した工夫を一層こらす必要がある。2020年度中にオンラインでの聞き取りを試験的に行った。そこでは、既に信頼関係(ラポール)が築かれている対象者にはオンラインでの聞き取りが成立することが判明した一方で、ラポールが十分に構築されていない対象者との聞き取り調査は、質問内容によっては十全には行えないことも明らかとなった。この試験的オンライン聞き取り調査の実施により、現地調査の必要性、特にインタビュー対象者と直接会い研究に求められる適度なラポールを構築することが、政治的に機微な課題を主題とする当研究にとって重要であることが確認された。オンラインによる聞き取り調査は、移動に係る経費の圧縮などの利点がある。その一方で、ニュアンスのある言質を収集・分析することは困難であったことは否めない。今後、現地への渡航が難しい状況が続く場合を想定し、オンラインでの聞き取り調査においても適切なラポートを築けるよう、質問面やアクセス面での工夫を継続していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、2020年度においては海外渡航を含む現地調査に係る経費の使用が行われなかった。コロナ禍による海外渡航への影響が漸減するに伴って可能となる、事例研究対象国であるジョージア(昨年度延期分)およびコンゴ民主共和国(今年度予定分)における現地調査費用として、当該使用額を計上するものである。
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