研究実績の概要 |
2021年度は研究計画に従い、手元資金を研究開発投資に投入する企業行動を標準的な内生的経済成長理論のモデルに導入し、分析を進めた。東北大学での研究セミナー、および京都大学と東京工業大学の共催ワークショップで発表した際に頂戴したコメントをもとに改訂を行った。 2021年5月に、その研究成果を以下のワーキングペーパーとしてまとめた。 "Growth and Welfare Effects of Intervention into Patent Licensing Negotiation." MPRA Paper No.108009, May 2021. その後、海外査読付きジャーナルに投稿をした。肯定的なレフェリーは存在したものの、総合的にRejectという判定を頂いた。否定的な意見として、手元資金を研究開発投資に投入する企業行動と、経済成長率の関係についてのエビデンスが不足しているというコメントを頂いた。現在は別のジャーナルに投稿し、査読結果を待っている段階である。 また2021年度はこの研究プロジェクトを通じて、企業間の特許ライセンス契約をゲーム理論を用いて描写することの重要性を実感したため、上記のペーパーとは方向性を変えた研究も別に遂行した。その結果、特許の先行保護の強化が経済成長率を低める可能性が示唆された。これは特許の先行保護に関する既存の理論的論文には無い研究成果である。また、この研究は2022年5月の日本経済学会春季大会で報告する予定である。
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