研究実績の概要 |
不確実性下の意思決定実験研究の多くは人の意思決定が期待効用モデルから乖離している証拠を示しているものの、不確実性下の最適化行動を最もよく説明する簡潔なモデルについては合意を得ているとはい言い難い。本研究は、高次リスク(・曖昧さ)態度と、1)自己予防、2)集団予防、の各問題における最適化行動水準との間に成り立つ理論予測を、近年開発されたモデル・フリーな高次リスク(・曖昧さ)態度抽出課題を用いた実験室実験により検証する。 2020年度は、経済実験を教室にて対面で行うことが困難となり、またいつ対面実験が再開できるか見通しが難しくなった。そこで代替的かつ継続可能な手段としてオンライン経済実験環境(z-Tree Unleashed)を確立する必要が生じた。この環境はごく最近になって研究者により開発されたため、日本で先に実装した例はごくわずかであった。そのため所属機関において、この実験環境を対面実験並みに安定して運用できる水準まで準備するのに半年程度の時間を要した。 2020年度は、Aoyagi, Masuda and Nishimura論文のセミナー発表、高次曖昧さ態度抽出方法論にかんする発表を数件行った。また、関連文献の調査とオンライン学会参加を通じた情報収集を中心に活動した。とくにD-TEA (Decision: Theory, Experiments, and Applications) ワークショップでは高次リスク(・曖昧さ)態度にかかわる最先端の実験研究を知ることができた。 研究課題と関連する論文2本を、ディスカッション・ペーパーとして公開した。
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