本研究は『行動経済理論およびその市場分析への応用』という研究課題のもと、一部の消費者が合理性からシステマティックに外れた予想をもっている(ナイーブである)場合の市場均衡分析、および近年の心理学からの知見を組み入れた新たな行動経済理論モデルの構築を目的とする。 今年度の主な研究実績としては、自尊心の不安定性についての理論研究を行った"Fragile Self-Esteem" (Botond Koszegi氏及びGeorge Loewenstein氏との共著)というタイトルの学術論文が、国際英文査読誌のReview of Economic Studiesに出版されたことが挙げられる。本誌は経済学における最高峰の査読誌の1つであると広く認知されている。 また、消費者の一部がナイーブな場合における最適な市場メカニズム設計の不可能性について理論的に示した"Adverse Selection and Bounded Rationality: An Impossibility Theorem" (山下拓朗氏との共著)というタイトルの学術論文が国際英文査読誌のJapanese Economic Reviewに近刊となった。 さらに、申請者のこれまでの研究および研究から得た知見をまとめる形で『行動経済学』というタイトルの和書を2022年3月に日本評論社から出版した。 並行して、他共著者との各研究プロジェクトをそれぞれ進展させ、そのうちいくつかのプロジェクトにおいて国内および海外のセミナー・ワークショップ・学会での研究報告を行った。
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