第一に、いじめと学校選択制の関係に関する日本、韓国等のアジア諸国における近年の世情を調べ、拙著Anti-bullying School Choice Mechanism Design(単著)の中でまとめた。それに従い、論文を全面的に改訂し、新しいドラフトとして完成させた。 第二に、昨年度から引き続き「マッチング制度における耐戦略性の規範的必要性」に関する研究を進めた(東京海洋大学の奥村保規氏ならびに一橋大学の平田大祐氏との共同研究の一環)。いじめに取り組む学校選択制において、いじめっ子といじめられっ子を別々の学校に進学させる為に耐戦略性を犠牲にすることの問題点について規範的に考察した論文を書き上げ、専門誌に投稿した。また、新たに耐戦略性とアファーマティブ・アクションの関係について考察を進め、後続研究として論文執筆を進めた。 第三に、昨年度から引き続き「ルームメイト問題における弱い安定性」に関する研究を進めた。いじめっ子といじめられっ子がどのように分けられるべきかを問う問題は、「提携形成問題」と呼ばれる枠組みで取り組まれる必要がある。しかし「提携形成問題」やその単純形である「ルームメイト問題」において、安定マッチングは一般に存在しないことが知られている。昨年度Games and Economic Behavior誌に公刊した論文に引き続き、この問題に取り組む為の新しい安定性概念を考案し、その存在可能性や性質について調べ上げた。このトピックについては"Weak Stability against Robust Deviations and the Bargaining Set in the Roommate Problem"(一橋大学の平田大祐氏ならびにシドニー工科大学の友枝健太郎氏との共同研究)をJournal of Mathematical Economics誌に公刊した。
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