研究課題/領域番号 |
20K13455
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
前林 紀孝 北九州市立大学, 経済学部, 准教授 (30735733)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 財政健全化の最適スピード / 世代間厚生の公正性 / 財政再建ルール / 増税ベースVS支出削減ベース / 金融リテラシー / 経済成長 |
研究実績の概要 |
まず、金融リテラシーの向上が経済成長及び財政の持続可能性に及ぼす影響について考察した。金融リテラシーが向上すれば銀行預金よりも収益率の高い企業への投資を促し、経済成長を加速する反面、銀行預金で資産を保有する家計が減ることで銀行が保有できる国債が減り、財政の持続可能性を低下させる要因となることが示された。また、家計の金融リテラシーが低い場合には、銀行の国債保有の増加はかえって、財政の持続可能性を低下させることが分かった。この場合、家計のほとんどが銀行預金で資産を保有しており、銀行の貸し出しが経済成長に必要な投資に回っている。したがって銀行の国債保有の増加はその投資をクラウドアウトするので経済成長を阻害し財政を悪化させるというのがその理由である。このような場合には財政再建の必要性が高まる。(2022年2月にJournal of Economics に掲載)
そこで次に財政再建をどのように進めていくかについて考察した。国債残高の対GDP比のターゲットを設定し、現在の国債残高の対GDP比からターゲットまでの差をどれぐらいのスピードで減らすのが妥当か、また減らす方法として、支出削減か増税のどちらが好ましいのかを財政の持続可能性、経済厚生、各世代の厚生の公正性の観点から理論分析を行った。まず、財政の持続可能性の観点からは税ベースの調整よりも支出ベースの調整の方が好ましいことが示された。一方、経済厚生の観点からは支出調整ベースと税を調整ベースとした財政再建のどちらが好ましいかは国によって異なることが示された。さらにこれらの違いは、政策当局者が経済厚生を基準にするかそれとも世代間の公正性をより重要視するかの違いにも依存することが分かった。しかし共通して言えたことは、財政再建はできるだけ早いペースで行うべきであるということである。(MPRA Paper No. 112593で公開)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスにおける行動制限・授業・学内運営の対応、および育児のため。
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今後の研究の推進方策 |
渡航制限により海外での学会への参加ができずにいる。発表受理された海外の学会でもOnlineでも参加可能な学会にしか発表予定が立っていない。国内の学会では発表済みである。日本と大学組織の渡航制限が厳しすぎて宣伝があまりできていないのが残念である。したがって国内の学会での発表からいただいたコメントを基に改定を行い、2つ目の研究も国際的学術誌への掲載を狙う。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外発表ができなかった(旅費=0)という予定外の状況による理由
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