研究課題/領域番号 |
20K13460
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
二本杉 剛 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (10616791)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 罪回避行動 / 性差 / 行動実験 / fMRI |
研究実績の概要 |
向社会行動は人間社会にとって極めて重要である。公平性に基づく向社会行動については性差があることが知られている。さらに、公平性に関する性差は経済発展などの社会的要因と関係すること、また生物学的(神経科学的)な違いがあることも明らかになり、学際的に研究されている。しかし、公平性だけが向社会行動を促すわけではなく、人間は相手の期待を裏切ることに罪悪を感じるため向社会的に振舞うことも知られている。これは罪回避行動と呼ばれる。罪回避行動は日常的な向社会行動であるにも関わらず、未だ十分な研究がなされていないため、ここでは罪回避行動を対象として、特に性差について深く研究することを目的としている。
本年度は、実験のデザインを完成させ本実験を実施した。実験は行動実験のみならず、その神経基盤を探るためにfMRI装置を用いたイメージング研究も実施した。具体的な課題としては、他者から期待されていることがわかる状況において、相手の意図に反して裏切るか、協力するかを被験者は選択する(信頼ゲームを拡張した課題)。45回のchoice setを用意し、数値のパターンを適切に変更し、何回も意思決定することで、個人の罪悪への感度を計測する。この個人の罪悪感への感度に性差があるのかを明らかにした。結果については、①男性の方が女性よりも罪回避行動をする、②男女共通の罪回避行動の認知基盤は共感であるが、男性のみに規範(rule-based decision)がある、③罪回避行動の神経基盤として男性にのみ背外側前頭皮質と内側前頭皮質の結合(先行研究でセルフコントロールや社会規範とかかわるといわれている脳結合)が要求される、ことが明らかになった。なお、これらの結果は国際学術雑誌において公表した。
現在は、これらの結果が日本人を対象にした結果であるため、他国においても同様の結果が観察されるのかを検証する準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、罪回避理論に基づいて実験デザインを構築し、行動実験を実施できた。さらに、当初計画にはなかったイメージング研究を実施し、罪回避行動の男女差の神経基盤の同定にも成功した。これらの結果が国際学術雑誌に掲載されたことは、当初計画以上の進展だと言える。また、さらなるステップとして、当初計画にはなかった文化差の研究にまで研究テーマを広げることができている。
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今後の研究の推進方策 |
日本人を対象にした実験では、罪回避行動に性差が観察されている。この結果が、日本のみの現象なのか、日本以外の西洋、東洋の国でも観察されるのかを実験することで、罪回避行動の性差が生物学的基盤に依存するものなのか、文化差に依存するものなかを検証したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため対面での学会開催が抑制されており、出張費の支出が計画通りに進まなかったため。コロナも落ち着きつつあるため、出張することを積極的に検討したい。
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