研究課題/領域番号 |
20K13463
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
周 雨霏 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (50823803)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ゾンバルト / ドイツ経済思想史 / 思想受容史 / 日独思想交流 / 中独思想交流 / 歴史学派 |
研究実績の概要 |
2021年度は、研究課題である東アジアにおけるW.ゾンバルト資本主義論の受容史、具体的には河田嗣郎、難波田春夫をはじめとする戦前・戦時に活躍していた経済学者のゾンバルト受容について、2021年8月に行われた欧州日本研究協会第16回国際大会で、「The Ideal of Social Policy: Kawada Shiro’ Analysis of Capitalism and Urban Social Problems」と題し、報告を行った。また、同年10月に開催された国際ワークショップで、「Fudo, Volksgeist and the “Japanese Economy” of the Totalitarianism: The Wartime Economic Thought of Naniwada Haruo」という題で発表をおこなった。欧州日本研究協会第16回国際大会では、国内外から近代日本社会政策思想に関する専門家も多く参加していたこともあり、グルーバル的視点からみた社会政策思想における日欧往来に関して、多くの刺激を獲得することができた。 それに、清末から民国期における中国の経済雑誌の調査で、これまでほとんど知られていなかった中国におけるドイツ経済思想の受容全貌を明らかにして、2021年12月に開催された国際シンポジウム「ドイツ社会科学の近代東アジア」で、「The German Impact on the Economy Thought in Republic China」という報告を行った。このシンポジウムで、1920年代の中国におけるゾンバルト著作の流布が経済思想における中独交流の文脈から論じるとともに、世紀転換期におけるドイツ社会科学(Sozialwissenschaften)が世界的範囲で影響を及ぼしていた背景に本研究の意義を再考する機会をえたのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の研究計画の一として、「ゾンバルトの資本主義論が、河田嗣郎をはじめとする社会政策学者たちにどのように受けとめられ、変更を余儀なくされたのか」というテーマを掲げたが、これまで順調に進展しているといえる。まず、書誌的な作業として、1910年から1920年代前半までに、河田に関する雑誌新聞記事、そして、大阪市立大学大学史資料室所蔵の「河田嗣郎関連史料」の調査を行い、先行研究に見られた欠落部分をおぎなった。とくに、河田によるとゾンバルト思想の受容については、これまでの研究ではほとんど論じられることがなかったが、河田によるゾンバルト著作の翻訳・解釈を精査することから始めて、大正期における社会政策をめぐる言論空間のゾンバルトの無視できない影響を明らかにすることができた。 2021年度の研究計画のもう一つは、中国におけるゾンバルト学説の受容史を明らかにすることである。『大夏』、『東方雑誌』、『独立週報』などの総合雑誌から『国立北京大学社会科学季刊』などの社会科学専門誌まで、多くの新聞や雑誌を網羅的に調査し、ゾンバルトの学説をはじめとするドイツ経済思想全般に対する中国のさまざまな反応を確認することができた。「研究実績」の欄でも触れたが、2021年度は、本研究課題の関わりに、計5回の学会・シンポジウム報告をおこない、計2本の論考を出版した。その意味では、2021年度は当初の計画通りに研究をすすめていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は最終年度であるので、これまで進めてきた研究のとりまとめを行いたい。具体的には、考察対象の一人である河田嗣郎のゾンバルト学説受容史に関する論文を刊行する予定である。また、本研究の成果の一つとして、「Imagining “Capitalism” in the Early Twentieth Century Japan:Focusing on the Reception of Werner Sombart’s Capitalism Analysis」をと題した学術論文の執筆を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に参加する予定だったすべての国際会議がオンラインで開催されることになった。それに、パンデミックの影響により、予定していた海外での文献収集も断念せざるをえなかった。出張旅費が予定していた額より大幅に少なくなった。次年度に書籍・資料の購入、英文論文のブラッシュアップのため用いる。
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