研究課題/領域番号 |
20K13464
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
金子 創 東京都立大学, 経営学研究科, 准教授 (20737639)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 搾取 / 衡平性 / 社会関係資本 |
研究実績の概要 |
本研究の主な目的は「異時点間の(非)搾取的な資源配分の実現可能性の検討」,そしてそれを通じた「倫理的な評価を可能にするベンチマークの導出」である. 2023年度はそれぞれについての進展があった.第一に,前者に関する取り組みとして,社会関係資本の要素を導入したモデルを構築し,その下での搾取的な資源配分の実現可能性について検討した.その結果,資源配分がある種の衡平性基準から逸脱する場合に,その逸脱の仕方には異なるパターンが確認された.こうした結果は,伝統的な搾取理論に精緻な理解を与えうるというだけでなく,社会関係資本の負の効果について新たな視点を提起する.この内容の一部は,編著論文の1章として刊行された.また,より一般的な拡張を試みた研究をいくつかの研究会で報告しており,様々な観点からのフィードバックを受け,現在,投稿準備中である. 第二に,後者の論点および上述の成果と関わって,社会関係資本概念の学説史を考察した.そこには倫理的な評価に関わる論点(上述の負の効果)も含まれており,それらをどのように体系的に捉えるか,という問題意識の展開を歴史的に整理した.当該の概念は様々な分野にまたがって検討されてきたが,それぞれの分野の関心や枠組みを反映し,必然的に倫理的な側面についても異なる視点をもたらしてきた.これらを整理することを通じて,本研究課題の意義もより広い観点から位置づけている.当該研究の成果については,経済学史学会関東部会やその他の研究会で報告しており,成果を取りまとめている段階である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初から代替的な方向性として計画していた応用的なトピックについての成果がまとまっており,総合的に勘案し,上記の評価と判断している.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度から応用的な方向性として進めていた社会関係資本に関する分析は,伝統的な搾取理論に対して,新しい視点からの再解釈を提起するものであり,基礎理論的な側面としても発展の余地を残している.この方向性で研究を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
応用的なトピックに焦点を合わせた計画に修正し,新しいモデルの分析作業を中心に進めたため,旅費としての使用が抑制された.
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