研究課題/領域番号 |
20K13465
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
笠井 高人 同志社大学, 経済学部, 准教授 (90755422)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カール・ポランニー |
研究実績の概要 |
本年度もコロナウィルスの拡大により、海外渡航がかなわなかったため、予定していたスケジュールを変更した。海外渡航によって入手予定の資料や、学会報告を控え、すでに入手済みの資料や公刊資料の読解に努めた。とりわけ、ポランニーのイギリス時代だけでなく、ハンバガリーやオーストリア時代つまりイギリス滞在以前の足跡を整理した。また、関連資料が公刊されたことにより、ポランニー家の行動をカールだけでなく、その兄弟や子供らの記録から接近した。思想を追う上で、身近な家族らの内的な出来事はややもすれば、研究から欠落しかねないが、本年度の活動により、細かなイベントをも顧慮してポランニー像を結ぶことができると期待する。たとえば、カールの妹パールの早世によるうつ状態、妻イロナがアメリカ入国が許されなかった経緯、さらに姉ラウラの晩年の研究活動を後押ししたカールの援助などが挙げられる。これらがカールの思想形成に少なくない影響を及ぼしたことは言うまでもない。 また、これらの調査より、ポランニー家の活動というあらたな研究テーマの萌芽も期待できる。ポランニー家はカールだけでなく、兄弟をはじめ、その親世代や子どもらも、卓越した業績を持つ。カールの兄弟だけでも、姉のラウラ、弟のマイケルは当時の知識人として、歴史に名を刻んでいる。カールの子供世代も同様に、子であるカリのカリブ海の政治経済学研究をはじめ、北米で活躍した陶器デザイナーや医学技術の開発者、さらにはハンガリーの測量技術研究者などとして活躍した。また、カールの父親世代も、ロシア系の知的聖職者や工場経営のブルジョワであった。20世紀のハンガリー=オーストリア二重帝国という文脈をもとに、ポランニー一家の各人を検討することは、知的移民の足跡をしるすことに直結する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルスの感染拡大により海外渡航による資料収集がかなわなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は既存資料のさらなく読解に努め、学会報告を通して、論文執筆を進める。とりわけ、ポランニー一家の足跡を加味して、カールのイギリスでの労働者教育時代の思想を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの感染拡大によって海外渡航がかなわなかったため。 今後は渡航のチャンスをうかがいつつ、これまで金銭的に入手が困難であった資料の獲得のために使用する。
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