費用や税が価格にどのように上乗せされ(「パススルー」)、その負担を生産者と消費者でどのように分け合うか(「帰着」)の理解は、生産に関わる規制や政策全般について、その影響を予測するために重要である。本研究の目的は、「企業による品質選択を考慮した場合、パススルーや帰着は市場の特徴(需要関数の形状など)とどのような関係を持つか」という問いについて実証的に明らかにすることである。 2023年度には、昨年度から引き続き、実証分析の土台となる理論分析に取り組んだ。その結果、企業による品質選択がある状況における需要関数の形状とパススルーの関係について理論的に整理することができた。 補助事業期間全体を通しては、研究を進める中で、当初予定していなかったふたつの方向への研究アイデアが浮かび、まずはそれらを形にすることを優先した。いずれの研究も本研究課題の実証分析をおこなう上で必要なものと位置づけられる。 具体的には、1)需要推定方法の改良と2)理論的枠組みの構築である。まず、旅客需要モデル推定方法を検討しているなかで、既存の手法を改善できることに思い至った。そのため、2020年度から2021年度にかけてはその確立と結果の公表を優先した。また、実証分析に用いる変数などについて検討するために既存の理論研究を確認していくなかで、理論的枠組みを拡張する方法に思い至った。そのため、2021年度から2023年度にかけてはその拡張と結果の公表に取り組んだ。今後、その理論モデルを土台とし、考案した需要推定方法を用いながら実証分析を実施していくことを計画している。 1)に関する論文はInternational Journal of Industrial Organizationに掲載された。2)に関する論文はワーキングペーパーとして公表し、投稿に向けた改訂作業中である。
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