研究課題/領域番号 |
20K13474
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
阪本 浩章 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (80758996)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 気候変動 / 統合評価 / 経済分析 |
研究実績の概要 |
研究計画にのっとり,動学的最適化問題の逆問題を解くことによって,非線形性を考慮した解析的統合評価モデルを開発した.開発した理論モデルには,当初想定したよりも大きな自由度があり,目的に応じて様々な形で非線形性を導入することができることが分かった.そこで本年度は,まず気候システムをより正確に記述することを目的に,既存のモデルと比較してとくに次の2つの点で改善を試みた.第一に,線形な炭素循環モジュールを拡張し,関数型を特定せずにモデルに非線形性を導入することで,炭素循環のフィードバック効果を柔軟に捉えられるように工夫した.第二に,気温モジュールについても,インパルス応答のラグを調整するレイヤーを導入することで,地球システムモデルの挙動をより適切に記述できるように工夫した.これらの改善により,従来は数値計算によって解く必要があった非線形な統合評価モデルについて,その解を解析的に特徴づけられるようになった. また,このような個人研究を進める一方で,気候変動研究に関する成果やアイディアを共有し,学際的な研究者ネットワークを構築することを目的に研究会を立ち上げた.これまでに3回のミーティングを開催し,経済学のみならず,理学や工学,さらには学際領域を専門とする研究者とも広く意見交換を進めた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成果を報告する予定であった国際会議の多くは中止となったものの,解析的統合評価モデルの理論的な枠組みの開発自体については研究計画の通りに進めることができた.主要な定理もおおよそ完成している.
|
今後の研究の推進方策 |
2年目には,3年目以降に実施する応用分析も念頭に置きながら,理論的な枠組みを完成させる予定である.また同時に,1年目に立ち上げた研究会を発展させ,気候変動研究をテーマとした学際的研究者ネットワークの構築を進めたい.
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,参加予定であった国際会議が中止となったこと,また研究会のための出張ができなかったことにより,計画よりも支出額が少なくなった.次年度以降も海外出張の可能性は見通しが難しいため,今後はオンライン会議等で当初の目的を達成できるように通信環境等を整備する予定である.
|