研究課題
1年目に開発した非線形な解析統合評価に関する理論モデルをもとに,主要な定理をまとめて論文の執筆を進めると同時に,さらなるモデルの開発に努めた.とくに,地球システムにおける炭素循環の特性を利用することで,理論的な結果がかなりシンプルに表現できることを明らかにした.また,非線形性を導入することの利点を明確にするために,モデルの自由度を表現する関数をある程度特定化し,状態変数が1つである場合の解析的統合評価モデルの具体例を考えた.政策的な応用として,従来のような「炭素の社会的費用」だけでなく,近年では「メタンの社会的費用」に対する関心が高まっていることを受けて,解析的統合評価モデルにおける気候モジュールで炭素以外の温室効果ガスを記述する方法を模索した.開発した解析的統合評価モデルの応用として,国際環境協定の安定集合にに関連する論文も執筆し,国際学会と国内学会で研究報告を行った.一方で,昨年度に執筆を進めた気候変動の動学ゲームに関する論文を改訂し,ジャーナルに再投稿し,採択された.論文執筆や学会報告以外では,昨年度に引き続き,気候変動研究に関する学際的な研究会を開催し,解析的統合評価モデルの開発と応用について異分野の研究者とアイディアの共有に努めた.具体的には,全球気候モデルや工学ベースの統合評価モデルの研究者と意見公開を行い,経済学的なアプローチとの共通点や相違点を踏まえながら,気候経済モデルの拡張の可能性について議論した.
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りに論文の執筆を進められており,またオンライン参加ではあるものの,国際学会や国内学会で研究成果を報告することができた.また,研究成果として論文を刊行することもできた.
理論モデルを提案する論文を完成させるとともに,並行して応用分析に関する論文の執筆も進めていく予定である.また,気候変動研究に関する学際的な研究会をさらに活発化させ,本研究プロジェクトの研究実績につなげたい.
当初の研究計画にあった出張の機会がなく,学会等もオンライン開催であったため.繰越分は,当該年度分と合わせて,変更した研究内容およひ追加的な研究に対して使用する計画である.
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Journal of Economic Theory
巻: 197 ページ: 105321~105321
10.1016/j.jet.2021.105321
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