研究課題/領域番号 |
20K13475
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 大輔 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 特任講師 (00791253)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グローバリゼーション / 海外直接投資 / アウトソーシング / FDI |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、加速化するグローバリゼーションの中で企業の貿易や海外直接投資を通じた国際化が国内の労働市場にどう影響するかを分析することである。本年は東京商工リサーチの企業情報データを整備し、貿易が企業の雇用に与える影響を検証できるパネルデータの構築に注力した。また海外直接投資(FDI)の影響を調べるために、企業の参入と退出のダイナミクスを検証した。多国籍企業による海外直接投資は、貿易と並ぶグローバリゼーションの柱であり、海外販売額の観点から近年そのプレゼンスが高まっている。しかし輸出や輸入のダイナミクスに比べ、企業レベルのFDIダイナミクスの研究は、まだ数が少ない。本研究では1995年から2015年の海外事業活動基本調査、および企業活動基本調査のデータを用いて日本の多国籍企業のFDI参入と退出の決定要因を、国ごとの「FDI垂直度」という概念に重点を置いて分析した。まず現地法人の数に関しては、20年のサンプル期間でアジアでの増加が顕著であったのに対し、北米やヨーロッパでは緩やかな減少傾向であった。アジアでの増加の要因は2000年以降の参入率の上昇であり、退出率はほとんど変化がなかった。1995年以降に設立された現地法人を対象として、コーホートごとに設立以来の経過年数(現地法人年齢)と退出率の関係を調べた結果、年数が経過するにつれて退出の確率も高くなっていくことが分かった。FDI参入と退出の決定要因を調べるため、企業レベルのパネルデータを使い、参入と退出のプロビットモデルを回帰分析した。進出先までの距離は参入には負、退出には正の影響があり、重力モデルのような傾向が確認された。また直近3年間の当該地域における輸出の経験は参入確率を上昇させ、退出確率を低下させることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であった東京商工リサーチの企業情報データの整備を進めることができた。また海外直接投資に関する分析では実証研究において様々な結果を提示することができた。海外事業活動基本調査を用いて、企業のサプライチェーンにおける日本との繋がり(垂直度)が、FDIの参入や退出にどう影響するかをプロビット回帰モデル等で検証できた。これらの成果は経済産業研究所のディスカッションペーパーとしてまとめられ、刊行された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本年整備した東京商工リサーチの企業情報、及び企業間ネットワークのパネルデータを用いて海外でのショックが国内の労働市場にどのような影響を及ぼしたかを検証していく。具体的には企業の国際化を加味した理論モデルを構築し、海外での活動促進が国内の労働をどれほど代替するか、または補完関係にあるのかを検証する。さらにその異質性を明らかにし、政策インプリケーションにつなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス拡大の影響で海外での発表機会や打ち合わせがなくなり、旅費の支出がなかったため。
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