研究課題/領域番号 |
20K13475
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 大輔 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 特任講師 (00791253)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 感染症 / コロナ禍 / SIRモデル |
研究実績の概要 |
昨年度も引き続きコロナ禍における経済活動と感染症対策の両立について研究、分析を行った。具体的には感染症のモデルに人流をベースとした経済活動を組み込み、両方の変数をシミュレーションできるモジュールを開発した。変異株やワクチン接種等も考慮できるように改良し、さまざまな政策分析を行なった。それらの結果は東京都のコロナモニタリング会議や政府のコロナ分科会に提出され政策決定プロセスに一定の貢献があったと考えられる。また東京オリンピックがコロナ感染に与える影響や、コロナ禍における自殺、オミクロン株蔓延の感染拡大予測などの政策分析を行なった。さらに各国のデータや都道府県別のデータから、それぞれの国や地域がコロナ死亡者を回避するための支払い意思額を顕示選好的アプローチから推定し、論文にまとめた。また日本におけるコロナ感染症と経済活動の両立についての論文は"COVID-19 and Output in Japan"としてJapanese Economic Reviewに掲載された。その他の成果としては、既存の感染症のSIRモデルに新たにリスク回避的な人口を導入し、感染の波が内生的に発生する微分方程式モデルを構築した論文"Heterogeneous Risk Attitudes and Waves of Infection"という論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスによるパンデミックの世界的な影響を受け、昨年度は本来のテーマである国際貿易と労働市場から離れ、コロナ感染症対策と経済活動の両立というテーマで研究を行なった。研究実績の概要で述べたとおり、政策分析を中心に行い、自治体の会議や政府分科会、厚労省アドバイザリーボード等さまざまな場面で研究成果が引用された。それと共に既存の感染症モデルに経済活動を組み込んだモデルを中心に研究を進め5本の論文を執筆した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、本来の研究テーマである国際貿易と労働市場について研究を行う予定である。具体的には既存の企業の異質性を考慮した輸出モデルに国内生産ネットワークを組み込むことで間接輸出企業を明示的に扱い、それらの存在が貿易自由化が労働市場にもたらす影響をどう変化させるかを分析する。また海外事業活動基本調査等のデータを使用し、企業の海外直接投資(FDI)によって現地と日本国内での雇用がどう変化したかをモデルを使った構造推計で分析していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により海外での論文発表や研究打ち合わせをキャンセルしたため。本年度は海外での活動が予定されており、旅費として使用する計画である。
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