研究課題/領域番号 |
20K13480
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
五十川 大也 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (90708645)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 研究開発補助金 / イノベーション / 構造推定 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、研究開発活動を行う民間企業への公的な補助金に関して、政策効果を定量的に分析することである。当該年度および翌年度の目標は、研究開発活動の波及効果を明示的に組み入れた上で、研究開発補助金が補助金を直接受給した企業だけでなく、市場全体にどのような影響をもたらすのかを社会厚生を含めて定量化することとしている。本研究は、補助金を直接受給した企業に焦点を合わせていた先行研究と比して学術的独自性があり、また今後の科学技術イノベーション政策のあり方について民間部門への財政支援の観点からエビデンスを提供する点で政策的意義を有する。 具体的な内容としては、第一に市場内の競合企業との関係を踏まえて企業が意思決定を行う経済学モデルを構築する。第二段階として、モデルに含まれるパラメータ(利潤関数のパラメータ、特に波及効果を捉える構造パラメータ)をデータから推定する。最後に、推定したパラメータのもとでシミュレーション分析を行い、わが国の研究開発補助金のインパクトについて定量的に評価する。 当該年度は、研究の基礎となる経済学モデルの構築および構造パラメータの推定を行った。先行研究をサーベイした上で、わが国の民間部門における研究開発投資の特徴を考慮しながら、適当なモデルを構築している。推定に用いるデータとして、日本におけるイノベーション調査である「全国イノベーション調査」(文部科学省科学技術・学術政策研究所)を選択した。データセットを整備した上で、計量経済学的な手法を用いてモデルに含まれるパラメータの識別・推定を行った。研究の内容・結果については関連分野の研究者とのディスカッションやワークショップでの報告を通じて、フィードバックを受ける形で適宜ブラッシュアップを行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の内容は概ね計画通りに実施した。ただし、研究の成果について、当該年度に国外学会での報告を1回予定していたが、コロナ禍によってこれを行うことができなかった。代わりに、オンラインでの関連分野の研究者とのディスカッションやワークショップでの報告を積極的に行うことで、フィードバックを受ける機会とした。
|
今後の研究の推進方策 |
研究実施計画に沿って進めることとする。2021年度は、前年度に構築したモデルにしたがってシミュレーション分析を行い、「民間部門の研究開発活動に関する波及効果はどの程度であり、研究開発補助金が市場全体にどのような影響をもたらすのか」という問いに取り組む。2021年度は国外学会での報告を1回予定している。当初はAnnual Conference of the European Association for Research in Industrial Economics(以下、EARIE)での報告を予定していたが、コロナ禍における不確実性のため、年度の後半に実施される関連学会への参加に変更する。具体的には、Asia-Pacific Industrial Organization Conference(以下、APIOC)またはAsia Pacific Innovation Conference(以下、APIC)を想定している。また、同年度の研究の成果は英文公正を依頼した上で、国際学術誌に投稿する。 2022年度は、新たにシミュレーション分析を行い、「波及効果を踏まえて、どのように補助金を配分するのが社会的に望ましいのか」という問いに取り組む。2022年度は国外学会での報告を1回予定しており、状況によりEARIE、APIOC、APICのいずれかを想定する。また、同年度の研究の成果は英文公正を依頼した上で、国際学術誌に投稿する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の使用予定から変更があったため、次年度使用額が生じた。 予定していた国際学会での報告を行わなかったため、計上した旅費を使用しなかった。また、物品費として統計分析ソフトウェアであるStataの購入を予定していたが、代わりに別の統計分析ソフトウェアであるMATLABを購入したことによる差額が生じた。一方、年度途中に所属機関の変更があり、研究環境の変化が生じたため、研究を円滑に進めるために追加的に物品(複合機)の購入を行った。結果として、次年度使用額は少額に留まった。なお、これらの変更による研究実施計画への影響はない。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画は、当初の請求分については変更しない。次年度使用額は物品費として用いることを予定する。
|