再生可能エネルギー大量導入が卸電力市場に与える影響について、日本のスポット市場を対象とし、不完全競争市場である日本卸電力市場に焦点を当て、再生可能エネルギー電力の市場参入がスポット市場の価格水準と価格の変動性に与える影響について分析を行った。分析手法として、一般電力事業者から入手した再エネの時間ごと発電量と日本卸電力取引所(JEPX)が公表したスポット価格に関する情報を用い、動的パネルモデルによる分析を行った。また、本研究では、再エネが価格水準だけでなく、価格変動に与える影響についても検討を行い、結果として、スポット市場価格を安定させるため、再エネの出力安定性の向上以外にも、再エネ出力制御の対策と地域間電力調達の活用が必要とされる。 日本における地域間連系線の空容量不足の問題により、各一般電力事業者の供給エリアの間に市場分断が頻発し、特に北海道と東北を結ぶ「北海道本州間連系線」と、東京と中部を結ぶ「東京中部間連系線」の2か所の地域間電力調達能力が不足している。また、東北地方に豊富な風力資源があり、東京地方の電力不足への対応に運用できるため、他の地域間連系線に比べ、東北東京間連系線はより多く使用されている。そのゆえ、東北地方の再エネ電力生産が、地域間の電力調達を通じて、東京地方の卸電力市場にもたらす間接的な影響について分析を行った。また、スポット市場の価格水準と価格変動が地域内(東京地方)と地域外(東北地方)の再エネ電力生産による変化を捉えることに着目した。さらに、再エネ電力生産がスポット市場に与える影響の電力需要による変化について検討を行った。
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