研究実績の概要 |
本年度は、昨年度作成したラテンアメリカ・カリブ域内のグローバル・バリューチェーン(GVC)貿易の決定要因を分析した研究の改定を進め、改定稿を神戸大学経済経営研究所の英文ディスカッションペーパーとして発行した。さらに、この分野で評価の高い査読付き国際ジャーナルへの投稿も行ったところ、非常に好意的なコメントで”Revisions needed”の評価を得ることができた。今後、コメントをもとに、受理をめざして改定を行う予定である。 本年度は、遅れていた本研究の中心となる課題であるチリにおけるGVC上流度と多国籍企業の現地調達比率に関する研究を進め、計3回の学会・セミナー報告(うち1回は国際セミナー)を行い、英語論文を作成し、神戸大学経済経営研究所の英文ディスカッションペーパーとして発行し、さらに査読付き国際ジャーナルに投稿するところまで研究を大きく進めることができた。 具体的には、既に作成済みのチリの1995年から2007年までの事業所レベルパネルデータ(National Annual Manufacturing Survey, ENIA)を再度精査し、データのクリーニングミスなどがないことを確認した。その上で、これに昨年度までに作成したチリの産業別のGVC上流度・参加度の指標をマッチさせたデータセット作成した。先行研究を参考に、トランスログの費用関数から、国内原材料中間財の総コストに対するコストシェア方程式を導出した。これらを用いて、外資系企業の生産する財のGVCにおける上流度・参加度が国内原材料中間財のコストシェア(現地調達比率)に与える影響を、事業所レベルパネルデータを用いて分析した。この結果、本研究の仮説通り、GVCにおける上流度が外資子会社の現地調達比率に対して有意に正であることが分かった。その上で、結果のロバストネスについても慎重に確認を行った。
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