本研究では、日本の下水道事業者の効率性について、下水排除方式の違いに着目した実証研究を行う。下水排除方式には、雨水と汚水を同一の下水道管に流す合流式と、両者を別々の下水道管に流す分流式がある。ただし、合流式には、処理能力を超えた量の汚水が未処理のまま河川や海に放流されるという短所があり、これが水質汚濁や景観悪化などの問題を引き起こしている。そのため、日本では分流式への変更が推進されている。 そこで本研究では、日本の下水道事業者を対象として、下水排除方式の違いによる費用関数のグラフ上での位置や形状の違いを考慮しつつ、合流式下水道管を採用している事業者グループとそうでない事業者グループでは処理技術水準に違いがあるか、各グループの事業者は効率的な運営を行っているか、両事業者グループのうち、どちらが効率的かについて検証する。これにより、日本において推進されている、分流式下水道管の採用に経済的メリットが存在するかを明らかにすることが本研究の目的である。 2年目には、日本の下水道事業者の2001年度から2017年度のパネルデータを用いて、下水道事業の、グラフ上での最小化費用を示す費用フロンティアを推定した。このとき、合流式下水道管採用事業者グループの費用フロンティアと未採用事業者グループの費用フロンティア、そしてグループを総合した費用フロンティア(メタフロンティア)を導出した。この手法が、費用関数のグラフ上での位置の違いを考慮しつつ効率性評価を行うメタフロンティア分析である。 結果として、1年目に行った横断面分析と同様に、分流式下水管のみを採用している事業者グループのほうが合流式下水管を採用している事業者グループよりも費用面で効率的であること、すなわち分流式下水管のみを採用している事業者グループの最適費用が合流式下水管を採用している事業者グループの最適費用よりも小さいことが明らかになった。
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