研究実績の概要 |
今年度は、申請者が作成した国際標準産業分類にしたがってコード化した北朝鮮企業のデータベースを使用した論文の執筆を進め、またこのテーマと関連した学会報告を韓国で行い、現地の研究者と意見交換を行った(「北朝鮮の工業企業配置と自力更生戦略」, 2023経済学共同学術大会・韓国東北アジア経済学会発表[韓国語], 2023年2月2日)。 また、『朝鮮地理全書』に掲載された道路・鉄道網などの物流および輸送インフラに関する記述を抽出・データ化してから分析する作業も進め、進捗状況を研究会で発表した(「朝鮮民主主義人民共和国の物流システムの分析-1980年代の統計資料を用いた予備的検討-」, 比較経済研究会・福岡ワークショップ, 2022年9月15日)。 さらに、金正日政権から金正恩政権にかけて、北朝鮮指導部の経済政策がどのような部分で変化し、どのような部分で継承されているのか、またその移り変わりの中で、自力更生路線がどのような役割を果たしているのかを分析した論文を執筆した(「自力更生路線と内向きの経済改革の推進-外部の影響排除を目指す金正恩政権」, 日本経済研究センター2022年度「アジア研究」報告書, 第5章部分[未刊行,5月末に文眞堂より書籍として刊行予定])。 ほか、北朝鮮の各行政区域における住民の人口数と、住宅や教育・医療施設、企業などの配置を見ることで、市・郡レベルで住民の経済・社会活動がどのように営まれているかを分析するための研究も進めた。この研究作業は、『朝鮮地理全書』の記述と、国連の協力を得て1993年に実施された人口センサスのデータを用いて行っており、人口と居住地域というミクロの視点から北朝鮮経済の実相を明らかにするという点で意義があると考える。
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