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2021 年度 実施状況報告書

開発途上国における「政策効果の異質性」に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K13497
研究機関東海大学

研究代表者

若野 綾子  東海大学, 政治経済学部, 特任講師 (80837112)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード政策効果 / 開発経済学 / ミクロ計量経済学
研究実績の概要

本研究は「政策効果の異質性」に関する実証的検証を第一の目的としている。主に取り上げる政策は、開発途上国における初等教育の無償化である。開発途上国では、1990年代以降にエチオピア、マラウイ、ウガンダに加え2000年代以降サハラ以南のアフリカ諸国にて15か国が授業料を廃止した(UNESCO, 2015)。またアフリカ諸国以外でもカンボジアやベトナム、ネパールなどの国々でも初等教育無償化制度が導入された。

2年目となる本年は「政策効果の異質性」に関する研究として、ケニア共和国を事例として取り上げた。ケニア共和国は1988年の「無償化制度」廃止によって教育投資を中断した効果は、そういった女子の結婚年齢や出生行動に影響を与え、また次世代の子どもの投資にも影響を与えていたことが分かっている。本研究はすでに、査読付き海外雑誌に投稿中である。また2021年7月には『the World Education Research Association (WERA)』2020+1 Focal Meetingにて研究報告を行った。The World Education Research Associationは、教育分野の国際学会としては最も大きい学会の一つであり、多数の専門家から構成される国際セッションがある。本大会へはオンラインでの参加となったが専門家からの発言や指摘を受けて、論文を改善することができた。また2021年11月には、韓国経済通商学会(KEBA) 大会報告にて報告を行った。本大会は韓国において実施された国際大会であるが、オンラインによって参加した。教育分野を専門としない、他分野の経済学者からの指摘を十分に受けて論文を考察する視点を複数もつことが可能となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は「政策効果の異質性」に関する実証的検証を第一の目的としている。研究計画の時点では、大きく分けて研究①:初等教育の無償化制度に関する「政策効果の異質性」を各国のデータから検証する、と研究②:ケニア共和国に特化し、「無償化」の導入と「無償化」の廃止における「政策効果の異質性」を検証する、の2点があった。

研究①の進捗では、各国に共通する家計の個票データセット(Demographic and Health Survey Dataset)の収集が完了している。この研究①の追加として、2021年は、コロナ禍下における日本の経済政策の政策効果にも着目をした。具体的には、家計に対する経済支援として貸付(緊急小口資金、総合支援資金など無利子)や給付(住宅確保給付金などの家賃補助給付)を行ったが、これらの政府による経済政策が自殺者数の減少にどのような効果があったかを実証している。本研究は、すでに2022年5月に“the IASP 10th Asia Pacific Conference”(ゴールド・コースト、オーストラリア)にて発表しており、本年中に海外投稿を行う予定である。加え、2022年8月に開催予定のコペンハーゲンでの国際学会(the 19th European Symposium on Suicide and Suicidal Behavior)でも発表予定である。

研究②の進捗では、ケニア共和国の初等教育無償化が廃止された結果、女子教育投資が中断したことの政策効果を推定した。前述のとおり、女子教育投資は初婚年齢や第一子の出生年齢にも影響を与え、かつ出生数にも影響を与えることが分かった。本研究については、すでに海外査読付き雑誌に投稿した。

今後の研究の推進方策

本研究は「政策効果の異質性」に関する実証的検証を第一の目的としている。3年目となる次年度は「政策効果の異質性」に関する研究の最終年として、初等教育「無償化制度」の廃止と本政策の「無償化制度」の導入の比較に焦点をあてる。ケニア共和国では、他の開発途上国同様に、初等教育の無償化制度を導入してきた経緯があるが、1974年に本制度を部分的に導入し、1988年に本政策を完全に廃止し、2003年に再導入を行った。これによって、無償化制度の廃止により教育投資を中断した女子と、無償化制度の導入によって教育投資を受けた女子が存在する。3年目は、同一国における同一政策によって、どのような異質性が確認できるかを中心に研究を進める。

さらに2年目以降に着手した、日本国内におけるコロナ禍下における経済政策の政策効果として、家計への経済支援政策が自殺者数(自殺死亡率)に与えた影響を推定する。本分析は、都道府県ごとの自殺者数と経済政策の変数を用いて、パネルデータの固定効果分析を行っている。すでに、一部の経済政策については政策効果が確認出来ている。本研究も2022年には2件の査読付き国際学会での研究発表が決まっており、これらの学会発表を終えて、論文執筆を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

2020年から2021年は新型コロナ感染症の対策によって、海外渡航を行うことが不可能であった。それによって、計上した予算の予定通りの執行が難しくなった。結果、一部を最終年度に繰越して、対応をさせて頂きたい。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Mother’s years of schooling and their investment in early education of children2021

    • 著者名/発表者名
      Ayako Wakano
    • 雑誌名

      SSRN Electronic Journal

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.2139/ssrn.3842302

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Termination of universal primary education: Evidence from Kenya2021

    • 著者名/発表者名
      Ayako Wakano
    • 雑誌名

      SSRN Electronic Journal

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.2139/ssrn.3718156

    • オープンアクセス
  • [学会発表] Long term impact for termination of UPE: Evidence from Kenya2021

    • 著者名/発表者名
      Ayako Wakano
    • 学会等名
      World Education Research Association (WERA) Virtual Focal Meeting 2021
    • 国際学会
  • [学会発表] Termination of universal primary education: Evidence from Kenya2021

    • 著者名/発表者名
      Ayako Wakano
    • 学会等名
      韓国経済通商学会(KEBA) 大会報告
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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