研究課題/領域番号 |
20K13497
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
若野 綾子 東海大学, 政治経済学部, 准教授 (80837112)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 初等教育無償化 / 教育投資 / コストシェアリング / 新型コロナ感染症 / 自殺 |
研究実績の概要 |
2023年度は次の研究実績を出すことができた。1つ目に家計の教育投資行動に焦点をあてた実証研究である。ケニア共和国において、母親が高学歴と低学歴の2パターンで分けた際、子どもへの教育投資には統計的な差が見られた。ただし、子どもの無償化制度に直面した場合には学歴による差が短期間みられない状況が続いた。これは高学歴な母親と低学歴な母親の間での所得による差が無償化によって減じた可能性を示唆した。しかし、無償化制度が開始後、長期でみると母親の学歴によって子どもへの教育投資の差は再び確認された。本論文は、東海大学政治経済学紀要に2023年度に掲載済みである。
2つ目に、2024年度4月発刊されたEstrela(統計と情報の専門誌「エストレーラ」)の第361号に掲載された論文「新型コロナ感染症拡大下での自殺」がある。本論文は2015年から2022年の7年間の都道府県パネルデータを使用し、新型コロナ感染症拡大下において日本の女性の自殺が増加した傾向を確認した。本論文のデータ解析に使用したのは、厚生労働省の自殺統計と毎月勤労統計調査である。コロナ禍下において毎月勤労統計調査を確認すると、総労働時間数は大幅に減少している都道府県がほとんどである一方で、減少する時期に違いがあること、また2019年水準に戻る時期についても違いが生じている。この違いを確認し、毎月勤労統計調査から得られた総労働時間数の減少が女性の自殺件数にどのように影響を与えたかを調べた。本論文はすでに掲載済みである。
3つ目に、日本における小中高生の自殺パターンとインターネット検索ワードの関連性を確認した論文がある。本論文は、すでにJMIRのプレプリントとして公開中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究が開始した2020年から2年間は、在外研究や出張を行うことができず予定とおりの研究成果を上げることが困難であった。しかし、2023年以降には別途着手を開始したコロナ禍における日本の自殺に関する研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年は、すでに執筆した研究論文3件を投稿する予定である。1件目は、すでにWorking Paperとして仕上げている論文であり、SSRNに掲載している。本論文を改訂して「Introduction of cost-sharing policy and its long-term impact on quantity and quality tradeoff: Evidence from Kenya」という標題にて投稿予定である。2件目は、2022年に完了している論文で、SSRNに掲載済みのWorking paperであり、Mother’s years of schooling and their investment in the early education of childrenという論文、3件目はThe Effect of the Locally Hired Teacher Ratio on School Outcomes: the Dose-Response Function Estimation Evidence from Kenyaという論文である。これらの論文を投稿し、さらに2023年から開始している、コロナ禍における日本の自殺に関する研究論文の執筆を完成させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、海外雑誌に3件の研究論文を投稿するために、その投稿費用および英文校正用に使用する予定である。また、日本におけるコロナ禍での自殺件数に関する分析に必要なデータを取り寄せる予定で政府基幹統計調査のうち、集計データを受取るためにかかる費用として使用予定である。
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