研究課題/領域番号 |
20K13501
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
原口 純一 神奈川大学, 経済学部, 助教 (40827929)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 混合寡占市場 / 価格競争 / 数量競争 / 外部性 |
研究実績の概要 |
公企業と私企業が併存する混合寡占市場を考え、企業が価格で競争するか、数量で競争するか内生的に選択できる状況において、生産における外部性が各企業の意思決定に与える影響を分析した。外部性とは、例えば大気汚染など、市場を介さずに他者に与える影響のことであり、広く現実に観察される。 既存研究では、私企業は自社利潤の最大化を目的に意思決定し、公企業は社会厚生の最大化を目的に意思決定を行うと仮定し、公企業と私企業が差別化された財を生産する状況が議論されている。こうした状況において各企業が価格で競争するかと数量で競争するかを内生的に選択できる場合には、公企業も私企業も価格で競争することを選択し、結果として、両企業は価格競争をする状況が達成されることが示されている。 本研究においてこうした状況に生産における外部性がどのような影響をあたえるのかを考察するため、外部性の程度を表すパラメータを導入し分析を行った。結果として企業の価格で競争するか、数量で競争するかといった意思決定に生産の外部性が影響を与えることを示した。既存研究では公企業と私企業の価格競争を行う状況が結果として達成されることが知られていた。しかし、本研究によって、外部性が存在する市場については必ずしもこうした状況が達成されないことを示した。 今後の方針として、私企業の外国資本比率や、公企業の民営化の程度などを表すパラメータをモデルに追加し、こうした要素が企業の意思決定に与える影響も外部性とともに取り扱うことを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
混合複占市場で企業が価格で競争するか、数量で競争するか内生的に選択できる状況において、生産における外部性が各企業の意思決定に与える影響を分析し、外部性が存在する場合には両企業ともに価格で競争することを選択する状況が必ずしも達成されないことを示した。既存研究では外部性が存在しない状況を考え、公企業も私企業も価格で競争することを選択する状況が達成されることを示している。本研究成果は、こうした既存の結果は生産の外部性が十分に大きな市場においては成り立たないことを示している。また、どのような競争が各企業の意思決定の結果として達成されるのかについては、外部性の程度に依存している。 こうした結果を論文としてまとめ査読付きの国際的な学術誌に投稿することを当該年度の目標としていた。新規性のある結果が得られたものの、その成果をまとめ、論文を投稿するという段階には至らなかった。こうした理由から本研究課題の進捗状況ははやや遅れていると考える。今後早急に論文としての形式を整え学術誌に投稿を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
混合複占市場で企業が価格で競争するか、数量で競争するか内生的に選択できる状況において、生産における外部性が各企業の意思決定に与える影響を分析した研究について、その成果をまとめ、研究論文として発表することを目指す。そのために、ここまでの研究成果に関して誤りや、議論が不十分な点がないかなど改めて確認する。また、研究成果をより有意義なものにするため、議論を追加することを検討している。具体的には、私企業の外国資本比率や、公企業の民営化の程度などの影響も外部性とともに取り扱うことを検討している。こうした議論も踏まえ成果をできる限り速やかにまとめ、論文としての形式を整え学術誌への投稿を目指している。 並行して公企業と複数の私企業が価格競争を行う混合寡占市場における、価格設定のタイミングの内生化の研究も行う。この研究では特に私企業の数に着目し、企業数が各企業の価格設定のタイミング選択の意思決定に与える影響について分析を行う。価格競争を行う混合寡占市場において価格設定のタイミングを内生化する研究では分析を単純化するために複占を仮定することが多い。私企業数を明示的に扱った研究を行うことで、複占では扱うことのできない企業数が各企業の意思決定に与える効果を明示的に扱うことができる。この研究では、混合寡占市場における価格設定のタイミングの内生化に関する研究でも特に複数の私企業が存在するような状況を扱わなければ得られない含意を得ることを目標とする。例えば私企業数が多くなると、各企業は公企業だけでなく私企業との競争も念頭に意思決定を行う必要があるので、複占から寡占に仮定を緩めることは各企業の意思決定に影響を与える可能性がある。こうした研究も論文としてまとめ国内外で広く発表し、最終的には国際的な学術誌への投稿、そして掲載を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度と同様に新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い参加予定の学会が中止またはオンランイン開催となった。それに伴い旅費として使用を計画していた経費のほとんどが次年度使用額となった。本年度参加予定の学会が開催される場合にはその旅費に充てる。また、本年度も引き続き多くの学会がオンライン開催となることが予想される。その場合には、書籍やコンピュータまたはその周辺機器の購入費用に充てる予定である。
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