研究課題/領域番号 |
20K13507
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
室賀 貴穂 九州大学, 経済学研究院, 講師 (00828759)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ブロードバンドインターネット / テレワーク / オンラインショッピング / 産業構造 |
研究実績の概要 |
インターネットは我々の生活を劇的に変化させた。海外の先行研究には、インターネットの普及が労働市場での雇い主と雇用者のマッチングの改善に効果があったことを示したもの(Bhuller et al., 2019)や、女性の賃金や所得の上昇に結びついたことを示したもの(Dettling, 2017)がある。また、申請者の最近の研究では、インターネットが時間利用に与えた影響を分析し、インターネットの普及によって、労働時間が減少・家計生産時間が増加したことが明らかとなった(Muroga, 2020)。これらの結果を踏まえると、インターネットが労働市場に大きな影響をもたらした結果として、産業構造を変化させた可能性があるが、これまでは詳細なデータの不足が原因となり、インターネットが産業構造に与えた影響を調べた研究はなかった。そのため、本研究では、インターネット普及率の地域差に着目し、インターネットの普及が産業構造に与えた効果を推定する。分析では、総務省「ブロードバンド整備状況調査」・総務省「労働力調査」・厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の個票データを利用することにより、各都道府県別のインターネットの普及率を説明変数、産業別賃金・産業別労働者数・産業別労働時間・産業別テレワーク普及状況を被説明変数として、詳細な分析を行った。分析の結果、小売業従業確率の低下・卸売業従事確率の上昇が見られた。また、オンラインショッピング利用の増加やテレワークの増加といった我々の生活面に与えた影響も明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展しており、Asian Australasian Society of Labour Economics、 日本経済学会春季大会、東京労働経済学研究会等の複数の学会・研究会において研究報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは政府統計を用いた分析を行っていたが、より細かな行動データを得ることは難しい。そのため、今後は民間企業が収集している位置情報データを利用することによって、時間帯別の人々の移動状況、どの場所でどれだけの時間を過ごしているかを明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス対策の海外渡航禁止措置が影響し、国際学会がオンライン開催となり旅費の利用が予定より少なかったため次年度使用額が生じた。次年度は渡航規制緩和が見込まれるため学会参加旅費・調査旅費、また、パソコン等の物品費としての使用を計画している。
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