研究成果の学術的・社会的な意義として、①ほぼ先行研究では等閑視されていた「政策の受け手」の視点を財政史研究や財政理論に取り込む重要性を提起したこと、②未公刊資料を活用した新たな史実の発掘、③政策の受け手が何を「公正」と捉えるかが、財政理論や実際の政策形成の場面で考慮されるべき事柄であるということを明らかにしたことが挙げられる。とりわけ、①租税支出のような、特定の条件を満たす場合に適用される租税優遇措置は、政府と納税者(人々)のつながりを弱め、政府に対する人々の信頼や財政運営に対する信認を得にくくすること、②その結果、人々が財政政策を公正と見做しにくくなることを明らかにした点が重要である。
|