研究課題/領域番号 |
20K13512
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
新関 剛史 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (40733986)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 期待インフレ率 / 非伝統的財政・金融政策 / 家計支出 |
研究実績の概要 |
2021年度は2つの研究テーマのうち、①(ゼロ金利制約下において)期待インフレ率が家計消費に与える影響について、研究成果の学会報告及びジャーナルへの投稿を行なった。具体的には2021年5月に開催された日本経済学会(関西学院大学)及び6月に開催されたAsian Meeting of the Econometric Society(カーティン大学、マレーシア)で研究報告を行なった。また、それらの学会で得られたコメントに基づき、内容をブラッシュアップさせた上で、6月にJournal of Money, Credit, and Bankingへ論文の投稿を行ない、現在審査結果を待っている状態である。 また、上記は観測データを用いた分析であったが、これとは別に、ランダムな情報提供に基づいた実験データを用い、期待インフレ率が家計支出に与える影響の分析を行なった。推定の結果、観測データを用いた分析同様、期待インフレ率の外生的な上昇は家計支出を刺激することがわかった。本研究論文は現在Applied Economics Lettersに投稿中である。 2つ目の研究テーマである②(恒常及び一時)所得ショックが家計消費に与える影響については、first-shotの結果が得られた。それによると、まずリーマンショック時の負の世帯所得ショックの大部分は恒常所得ショックであったことがわかった。また、恒常所得ショックに対する限界消費性向(MPC)は0.21であった一方、一時所得ショックに対するMPCも0.14と有意な結果であった。さらに、学歴ごとにMPCを比較したところ、高学歴(大卒以上)ほど恒常所得ショックをうまくinsureできていることがわかった。一方、一時所得ショックに対するMPCは学歴間で有意な差は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定している2つの研究テーマのうち、①(ゼロ金利制約下において)期待インフレ率が家計消費に与える影響については、複数の学会で研究報告の上、すでにジャーナルへ投稿済みである。また、②(恒常及び一時)所得ショックが家計消費に与える影響についても、first-shotの結果は得られている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は②(恒常及び一時)所得ショックが家計消費に与える影響の分析をブラッシュアップさせることを目標とする。特に一時所得ショックに対して消費が有意に反応している点は、標準的なライフサイクル・恒常所得仮説が予測するものとは異なるため、プログラミングミスなどがないか改めて確認する。また、どのような属性を有する家計が所得ショック(特に恒常所得ショック)をうまくinsureできているのかについて、学歴以外の属性についても調べ、より深堀りを行なう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究報告した国内・海外学会がオンライン開催になったことを受け、予定していた旅費支出がゼロとなり、次年度使用額が発生してしまった。次年度は物品および可能であれば学会参加による旅費への支出を増やす予定である。
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