研究実績の概要 |
最終年度において、まず①(ゼロ金利制約下において)期待インフレ率が家計消費に与える影響の分析について、完成論文の投稿を行なった。具体的には、3つの家計レベルの個票データを用いた分析結果は、現在Journal of Economic, Behavior and Organizationから改定要求を受け、内容を修正している(2nd round)。また、情報提供型RCTを行なった論文については、Applied Economics Lettersにforthcomingとなっている。さらに、当初の予定にはなかったが、仮想的な消費税率パスをランダムに与えることで、それらが期待インフレ率、ひいては家計消費に与える影響についても調査を行なった。こちらは消費税周りに精通している名古屋市立大学の平賀一希准教授を共同研究者に加え、鋭意分析を進めている。 ②(恒常及び一時)所得ショックが家計消費に与える影響についての研究は、法政大学の濱秋純哉准教授を共同研究者に加え、先行研究の追加サーベイ及び追加分析を行なった。具体的には、日本の家計は所得ショックをかなりinsureできているとの結果となったため、その背後にはどのようなメカニズムがありうるのか(配偶者の労働参加、借入、貯蓄取り崩しなど)について、追加的なサーベイを行なった。また、どのような家計がより所得ショックをinsureできているかについて、追加分析を行なった。その結果、手持ち資産(cash on hand)が少ない世帯ほど、借入制約に陥っている世帯ほど、所得ショックをうまくinsureできていないことが分かった。 研究期間全体としては、上述の通り、①に関しては1本の論文がすでに発刊済み、1本が改定中(R&R)、1本が作成中、②に関しては1本が作成中である。
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