研究課題/領域番号 |
20K13517
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
菊地 雄太 早稲田大学, 商学学術院, 講師(任期付) (60782117)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 研究活動 / Roy/Borjasモデル |
研究実績の概要 |
研究活動は、個人の研究者が研究、教育、産学連携、雑務といったような複数のタスクに対する労働投入をどのように配分するか、という意思決定が一つの重要な起点となり行われている。その際に研究者はそれぞれの活動の間の様々なトレードオフ、補完関係を考えるであろう。例えば特許取得のための活動に時間を投入することはアカデミックな研究活動の時間を減らすことになり、両者はトレードオフの関係にあるかもしれない。時間の利用やマルチタスクへの労働投入は、Becker以降理論的に考察されているが、実証的には「個人内」でのマルチタスクに対する労働投入への意思決定過程とそれがアウトプットに与える影響についてはほとんど分析されていない。なぜなら、「個人内」での各活動への投入や、その結果として生じる複数の活動のアウトプットの観察は難しいからである。そこで本研究課題では、それぞれの活動への投入と、その投入に対する活動成果が比較的観察しやすい大学の研究者の活動に着目しマルチタスクへの時間投入は研究活動へどのような影響を与えるかを分析する予定であった。
しかし後述のように実施状況に変更を余儀なくされたため、本研究に関しては、インタビューに頼らない方法で分析するべく理論的な側面から検討した。個人の研究業績や特許のテーマを追っていくと、しばしばリサーチトピックが完全に変わることがある。これをRoy Borjasモデルをアナロジーとして研究分野間の「移民」として捉える。移民先の研究テーマとスキルの相関があれば、positive hierarchical sortingが生じる。この理論的予測を検証するために、Paray et al. (2017, ReStat)と同様の方法で実証的に分析することを検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
各研究者が研究活動に各活動への時間投入をどのように行なっているのか、についてデータを収集する予定であった。Fiorini & Keane(2014, Journal of Labor Economics)では30分間隔での調査を用いているという前例に則り、調査票は現段階では30分間隔で各活動時間を入力できるようになっている。質問内容については、1日のうち、30分単位で、「何を」「どこで」「誰と」行ったのかを回答していただく予定であった。これは2020年度中に詳細を関係者と固めて、2020年の途中から実施する予定であった。
しかしコロナ感染拡大による状況の混乱により、インタビューの実施が困難になり、計画の中断と変更を余儀なくされた。
|
今後の研究の推進方策 |
状況が変更したことを鑑み、インタビューに依存しない方法で関連する研究を実施する必要が生じた。そのため、いくつかの新しい研究をスタートさせた。その一つは研究者の研究テーマの変更というデータを分析し、上記のRoy Borjasモデルによる理論的予測の検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染拡大による状況の混乱により、本来実施する予定であったインタビューの実施が困難になり、計画の中断と変更を余儀なくされたことが理由である。状況が変更したことを鑑み、インタビューに依存しない方法で関連する研究を実施するため、いくつかの関連する新しい研究について使用する。実施状況で述べたように、研究者の研究テーマの変更というデータを集める際に、パテントと研究業績のデータ収集及びデータクリーニングのために使用する計画である。
|