研究課題/領域番号 |
20K13522
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
森田 薫夫 福岡大学, 経済学部, 講師 (00802737)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 最適課税 |
研究実績の概要 |
昨今のCOVID-19感染拡大の状況を鑑み、Marginal Cost of Public Funds(以下、MCPF)の指標を用いて、政府によるCOVID-19対策(ワクチン接種体制の構築、医療情報の発信など)の費用と便益の関係を定性的に考察した。 分析においては、労働生産性と寿命の異なる個人による経済活動を想定した経済モデルを定式化する。ただし、個人の経済活動は2期間に分けることができ、1期目に得た労働所得を当期の消費と貯蓄、及び感染対策(マスクの購入、テレワーク環境の整備など)に充て、2期目に生存した個人は貯蓄を取り崩し、消費に充てる。政府は所得水準に応じた所得税、個人の感染対策に対する補助金、政府としての感染対策と言った、経済政策を実行できる状況を考える。経済モデルを解析した結果、(1)MCPFを引き下げる効果と(2)引き上げる効果を定性的に示すことができた。(1)の背景には、労働生産性と寿命に正の相関がある場合、政府による労働生産性の低い個人の感染対策への補助金は、労働生産性の高い個人が自身が低い個人と偽る誘因を刺激することが挙げられる。それが示唆することは、生産性の低い個人の感染対策への助成よりも、政府による感染対策に1円を投入する方が望ましいということである。(2)の背景には、労働生産性と寿命に正の相関がある場合、政府による感染対策は労働生産性を低く偽る個人の生存確率を上げてしまうことが挙げられる。以上の分析結果を論文としてまとめ、現在学術雑誌より改定要求を受け、査読対応の過程にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初複数回の国内外への学会参加を計画していたが、新型コロナによる社会的状況を鑑みて取り止めている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の「研究実績の概要」にて述べた論文を採択されるように努める。 その上で、当初予定していた特定のサービスの売り手と買い手の行動を考慮した最適課税問題の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点から、国内外の学会への参加を取りやめたため、旅費への支出がなく、次年度使用額が生じた。来年度は国内外への学会参加に係る旅費や英文校正、より高度な数値計算を行うための支出を計画している。
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