研究課題/領域番号 |
20K13522
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
森田 薫夫 福岡大学, 経済学部, 講師 (00802737)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 最適課税 / 租税競争 |
研究実績の概要 |
昨年度に研究を進めていた、政府によるCOVID-19対策(ワクチン接種体制の構築、 医療情報の発信など)の費用と便益の関係に関する定性的な考察については、研究結果を学術論文としてまとめ、査読つき学術雑誌より公刊された。 特定のサービスの売り手と買い手の行動を考慮した最適課税問題の解析に関連する研究課題として、異なる国や地域間の資本移動に伴う租税競争における手番の内生的決定に関する分析を行った。租税競争における手番の決定においては、資本の買い手と売り手の立場が要因となることが知られている。例えば、2国共に資本の輸入国である時、資本税率を引き上げることで資本価格を引き下げる誘因を持つ。資本税率が戦略的補完の関係である元では、他国が先導者として税率を引き上げるならば、自国はそれに追随する。よって、このような場合には逐次手番が内生的に決定される。 ここでの分析では、そもそも資本移動には取引費用が伴うことに注目する。例えば、資本が自国から他国へ移動する場合、他国における規制などを精査する必要がある。このような状態を、資本移動が不完全であると呼ぶ。このとき、国家間の資本の課税収益には乖離が発生することになり、資本輸入国は資本税率を引き下げ、資本輸出国は引き上げる誘因を持つ。ここでの分析の目的は、資本輸入国並びに資本輸出国の不完全な資本移動に伴う誘因と手番の選択に伴う誘因との相互作用について考察を行うことにある。 分析の結果、不完全な資本移動の元では、逐次手番に対して同時手番がより選出されやすくなることが示された。これは取引費用が莫大である場合、事前に資本を流入させるために2国共に資本税率を引き下げる動機をもち、他国に追随する誘因を持たないためと考えられる。以上の結果は学術論文としてまとめ、研究会にて報告を行い、査読つき学術雑誌へ投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度中に取り組んでいた研究成果を査読付き学術雑誌に公刊することができたため。また、新しい研究課題を研究会で報告可能な水準まで分析を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
上記の「研究実績の概要」にて述べた論文を採択されるように努める。 その上で、当初予定していた特定のサービスの売り手と買い手の行動を考慮した最適課税問題の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点から、国内外の学会への参加を取りやめたため、旅費への支出がなく、次年度使用額が生じた。来年度は国内外への学 会参加に係る旅費や英文校正、より高度な数値計算を行うための支出を計画している。
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