本研究課題は開放経済の多世代重複モデルを用い日本の経常収支の分析と将来予測をすることを目的としていた。多世代重複モデルでは、家計は代表的個人ではなく年齢ごとにわかれた個人から構成されるため、複雑なモデル設計が必要となる。それを開放経済体系に拡張するため数値計算量も膨大となる。そのため本研究では年度毎に段階を分けて研究に取り組むという研究実施計画を立てた。具体的な研究計画は、令和2年度に基本モデルの構築とデータの整備に取りかかり、令和3年度は令和2年度のモデルとデータを使い実際にシミュレーション分析を行い、令和4年度は拡張モデルの検討を行うというものであった。 令和2年度においては、日本の経常収支を分析するために用いる基本モデルを構築し、シミュレーションで使用する国際的なデータセットの整備を行った。本研究課題に関連した研究として、基本モデルを応用して作成された閉鎖経済体系の多世代重複モデルを用い、日本の経済・財政状況のシミュレーション分析にも取り組んだ。その成果は「多世代重複モデルを使った財政の維持可能性の検証」としてまとめた。 令和3年度においては令和2年度に構築した基本モデルとデータセットを用いて、実際にシミュレーション分析に取り組んだ。これにより本研究の目的であった、日本の経常収支の決定要因を明らかにすることができた。また、もう一つの目的であった日本の経常収支の将来予測も行った。 最終年度である令和4年度においては、令和3年度に取り組んだシミュレーション分析の結果の取りまとめを行い、論文の執筆に取り組んだ。加えて、基本モデルを応用した開放経済体系下での日本の経済・財政状況のシミュレーション分析にも取り組み、その成果を「高まるリスクと財政の持続可能性」としてまとめた。
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