本研究は、コロナ・ショック前後の米国株式市場において、市場状態による企業規模別日中リターンと流動性等の日中リスクとの関係を調査することを目的とする。 具体的には、コロナ・ショック下の株価下落期、その直後の上昇期、コロナ・ショック以前期の3つの期間に分け、まず、各期間の市場と企業規模別リターンや流動性等の指標の特徴を確認する。そして、相関、回帰分析により市場、企業規模別リターンに対する流動性リスク等の影響度が、市場状態によりどのように変化したのかを確認する。最後に、企業規模を考慮することにより、市場リターンに対する説明力が向上するかを検証し、それが、市場状態によってどの程度の差があるかを確認する。データはニューヨーク証券取引所(NYSE)を傘下に持つインターコンチネンタル取引所が提供する、2019年から2020年のDaily TAQ(Trade and Quote)であり、NYSE上場全個別銘柄を対象としている。本研究の結果は、アノマリーの一種である小型株効果に対する実証的示唆を与え、さらに、パンデミック発生時の株式市場の振る舞いを理解する上においても、市場参加者に重要な示唆を与えるものである。 本研究の結果、小型株グループのリターンとリスクは、市況に関係なく変動幅が大きく、弱気相場期では小型株グループのリターンが他グループのリターンよりも低下することが示された。さらに、回帰結果では、弱気相場期と強気相場期においては、小型株グループのリスクが市場リターンの説明力を向上させることを示唆している。 今年度は上記の分析結果をまとめ、学術誌に投稿した。現在リバイズ作業中であり、まだ論文公表には至っていない。
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