研究課題/領域番号 |
20K13535
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研究機関 | 立命館アジア太平洋大学 |
研究代表者 |
笵 鵬達 立命館アジア太平洋大学, 国際経営学部, 准教授 (60847391)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 女性取締役 / ダイバーシティ / カーボンニュートラル / 二酸化炭素の排出 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、女性活用は企業価値増大に寄与できるとすれば、その要因にどのようなものがあるかを、明らかにすることである。本研究では、日本の企業レベルの二酸化炭素排出量に基づいて作成された新しいデータセットを用いて、取締役に女性が選任されている企業ほど二酸化炭素排出量が減少することを明らかにした。一方、女性が社外取締役に就任している企業では、二酸化炭素排出量の削減効果がより顕著であることがわかった。この研究の成果は、ガバナンスの観点からサステナビリティ・パフォーマンスを強化するという意味で、企業や規制当局にとって重要な政策的インプリケーションを提示できる。気候変動による脅威に対応するために、政府機関と企業は協力して排出削減を図る必要がある。2020年10月21日、菅義偉首相は、日本の温室効果ガス(GHG)排出量を2050年までにネットゼロに削減することを誓う計画を発表し、ビジネスの機会と課題を強調した。しかし、京都議定書の主催国である日本は、2006年に温室効果ガス削減目標を達成できず、排出量を増加させたことが示すように、既存のビジネスモデルや設備を変更することは経営者にとって簡単な決断ではない。本研究は、女性社外取締役による監視と助言の役割の重要性を強調し、再生可能エネルギーの利用と二酸化炭素排出の削減に寄与できると示唆する。昨年度作成した当該ワーキングペーパーをいくつかの学会やセミナーなどでの報告を行った。そして、2023年2月に、当該論文がPacific-Basin Finance Journal(SSCI; ABDC:A )に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
サンプルの期間を延ばし、その上で、分析手法を改善したため、国際学術誌への掲載が決まったと思われる。具体的には、2015年に女性活躍推進法が制定されたことに伴い、企業の取締役会における性別の多様性は大幅に改善されると思われる。そのため、追加分析では、差分の差分法 (DID)を使い、2015年法の制定を外生的なショックとして取り入れた。実験群(Treatment group)は、2015年以前に女性取締役を採用したことがなく、2015年以降に初めて女性取締役を任命した企業で構成される。一方、2013年以前に女性取締役を採用した企業は、この法律の影響を受ける可能性が比較的低いため、比較群(control group)となる。女性活躍推進法は、女性取締役の採用を促進できると考えられるが、企業レベルの二酸化炭素の排出量に直接影響を与える可能性は低いため、二酸化炭素の削減は、実験群(Treatment group)の方がより顕著になるはずである。検証した結果、女性社外取締役は二酸化炭素排出の削減に寄与できることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
企業レベルの二酸化炭素の排出量のデータに加え、NIKKEIの機関投資家の持ち株比率とトムソン・ロイターのESGデータを追加収集し、二酸化炭素の排出、機関投資家とESGに関連する三本のワーキングペーパーを2023年12月までに作成し、SSCIジャーナルへの掲載を目指す。 具体的には、国内機関投資家と国外の機関投資家の持ち株比率と企業レベルの二酸化炭素の排出量との間に、どのような関係があるのかを検証し、その上で、安定株主とされる銀行、証券会社、関連会社の持ち株比率と二酸化炭素の排出量との関係も検証する。これにより、株主の構造が、企業の二酸化炭素の排出にどのように影響するのかを明らかにしようとする。さらに、東洋経済のCSRデータから、環境会計の導入、省エネ設備の導入、CSR専門部署の設置など、二酸化炭素を削減できる原因を突き止める。最後に、インクルーシブな経営者が二酸化炭素の削減に積極的に取り組んでいるかを検証する。 これからは、データの収集、実証分析やドラフトの執筆など、共著者と役割分担し、今年中の投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの関係で、予定していた海外学会に参加することができなかったため、未使用残額が生じた。次年度には、ジャーナルの投稿費、英文校正費と国内外の学会の参加費に使用することを予定している。
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