研究課題/領域番号 |
20K13537
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
張 テイテイ 東北大学, 経済学研究科, 博士研究員 (60803046)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 学会報告 / 史料解読 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルスの流行で、当初計画した信州地方および東京への資料調査を実施できなかった。その代わりに、今井村の村文書の解読と分析を中心に研究を進んだ。撮影済みになった今井村の庄屋文書(五人組帳や御用日記等の村政文書、村明細帳、皆済目録や御物成金納請取帳等の貢租・課役関係文書)の部分の解読と分析を中心に行った。未撮影した部分に関しては、来年度の新型コロナウイルスの流行が終息出来れば、早めに調査に行って撮影したいと考えておる。 今井村の社会構造と生業構造に取り組むその成果を、2021年7月10日(土)に歴史人口セミナー(zoom)で、「近世信州川中島今井村の人口移動」をタイトルに報告した。今回の報告では、今井村を事例として、近世から明治初頭までの他所奉公人史料と「宗門帳」に基づき、当村の人口動態と労働力の移動について報告した。主な結論は以下の通りである。享保16(1731)年から明治6(1873)年までの142年間にかけて、今井村の人口は順調に増加していた。その増加の趨勢を支えていたのは、人口の自然増ではなく、周辺村落から人口の社会的移動であった。今井村は少なくとも18世紀の初めからすでに現金諸稼ぎを盛んに行い、商品経済もかなり発展していた。さらに、今井村は他所奉公人を排出すると同時に、近隣の村々から(家事・農事の手伝いをする)「下人」も雇っているのであり、当村には一般的に「貧困」とは異質の経済力が存在していたと考えるべきだろう。つまり、当村の「他所奉公」と呼ばれる労働力移動は、次三男の「口減らし」的な動機、すなわち「貧困」を原因とするものだけでは説明としては充分だと考えられない。参加者の方々からいただいたコメントを踏まえ、論文をまとめて来年度に投稿する予定を立てている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響で、当初計画していた信州と東京への資料調査を実施できないことになってしまった。前年度に引き続き、手元にある今井村の史料の解読に専念していた。その成果を、2021年7月10日(土)に歴史人口セミナー(zoom)で、「近世信州川中島今井村の人口移動」をタイトルに報告した。参加者の方々からいただいたコメントを踏まえ、論文をまとめて来年度に投稿する予定を立てている。 そして、研究課題に関連する専門書の購入で、先行研究の蓄積を深めた。これも投稿論文の準備になる。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの流行状況に応じて臨時応援に研究計画を遂行していくと考えておる。新型コロナウイルスが終息できれば、できるだけ早く信州と東京への資料調査を実施する。もし新型コロナウイルスが終息できない場合では、手元の史料の解析に専念し、そのデータに基づき、投稿論文の作成と国内の学会報告(オンライン)の形で、研究成果を発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行で、当初計画した調査の実施はできませんでした。そのため、旅費は発生していません。今年度に余った金額を、来年度の投稿論文の作業に使おうと考えております。
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