本研究の目的は、19世紀中葉における「アジアの銀吸収」の実態を解明することであった。第一に、銀吸収の実態を数量的に把握すべく、アジア各地の1820年代-70年の銀貿易の規模とトレンドを統計から復元した。その結果、アジアの西欧からの銀輸入額は、1840年代は平均2万ポンドだったものが、1850年代には7百万ポンド、1860年代前半には9百万ポンドへと増大したことが判明した。さらに、アジアの銀貿易のメカニズムを解明すべく、西欧・アジア各地の銀市場価格と為替レートを用いたブリオン現送点による分析の結果、1850年代-60年代にかけてアジアに銀を輸入する裁定取引の利益が生じたことが判明した。
|