研究課題/領域番号 |
20K13541
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
佐藤 淳平 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (50792496)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 財政 / 南京国民政府 / 地方予算 / 江西省 / 主計処 |
研究実績の概要 |
2021年度は、南京国民政府期(1927-1937年)の中央政府と省政府及び主計機関の財政上の関係性を表す事例として、江西省政府の地方予算編成過程について、中国第二歴史档案館、国史館所蔵の公文書や『歳計年鑑』などの公刊史料を用いて分析し、以下のような結論を得た。 従来の研究では、1931年4月の胡漢民を中心とする立法院主導による主計処の設置により、主計処が国家予算の基軸として定着したと言われてきたが、地方予算については、この図式は必ずしも成り立たない。 なぜなら、1934年8月の予算法の変更により、主計処の設置以降弱められたとされる行政院と財政部といった行政機関の地方概算編成に対する権限が強められたためである。また江西省は、中国共産党の革命根拠地が置かれ、中国国民党とその主導権を争った地区であったため、他の省とは異なり、軍事委員会委員長が地方概算の編成に対して審査意見を付けるなど影響力を行使していた。 また当該時期には、江西省のみならず地方予算の編成は多くの省で遅れがちであり、予算成立に至らない省も少なくなかった。この要因の1つとして、1935年段階においては主計処を頂点とする会計組織が地方レベルでは未だ設置されておらず、財政状況の把握が不十分だったことが挙げられると結論付けた。 上記の研究成果は、佐藤淳平「南京国民政府の地方予算編成過程に関する考察-江西省政府民国24(1935)年度地方総概算を例として-」『東洋学報』103-3、2021年、として公刊された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、拙稿「南京国民政府の地方予算編成過程に関する考察-江西省政府民国24(1935)年度地方総概算を例として-」『東洋学報』103-3、2021年、を公刊するなど一定の成果を上げることができたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により当初予定していた南京の公文書館における史料調査は実施できなかった。現在はウェブで公開されている国史館所蔵の公文書や公刊史料を用いて、南京国民政府期の軍事費に関する論考を準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、南京国民政府期初期に見られた軍事費抑制の動きについて、ウェブ公開されている国史館の公文書や『歳計年鑑』『中華民国史档案資料彙編』などの公刊史料を活用して分析し、論文を執筆する。また南京国民政府期の通過税に関する資料収集と読解を進める。この点については、『民国税収税務档案史料彙編』『同続編』といった公刊史料を活用する予定である。新型コロナウイルスの感染が終息し、中国への渡航が可能となれば、南京の公文書館における史料調査も実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は新型コロナウイルス感染拡大のため、南京の公文書館において史料調査を実施できなかったため、次年度使用額が生じた。新型コロナウイルスの感染が終息し次第、南京の公文書館での史料調査を実施する予定であるが、万が一実施できなかった場合は公刊史料集の購入費に充てる予定である。
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