研究課題/領域番号 |
20K13542
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
林 彦櫻 弘前大学, 人文社会科学部, 助教 (90846354)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 零細小売業 / 家族経営 / 衰退 / 女性労働 |
研究実績の概要 |
2021年度は,研究課題に沿って「戦後日本における零細小売商の家族経営と商業婦人の役割ーー1950年代後半から1980年代初頭を中心に」と「安定成長期における中小小売業の事業転換」という二本の論文を作成し,現在学術雑誌に投稿中であり,2022年度に掲載されることが期待される。いずれの論文も零細小売業がなぜ,どのような経緯を経て衰退に至ったのかという研究課題の問題意識で作成しており,最終的に研究課題が設定した問いの解明に寄与することが期待される。 また,2021年度は2回の大規模学会で学会報告を行った。その内,2021年9月10日に経営史分野における世界最大の学会である2nd World Congress on Business Historyで「Small Family Businesses and Network in Retail Industry: The Rise and Fall of Shopping Streets in Post-war Japan」というテーマで報告を行い,有益なアドバイスをもらった。もう一つの報告は,中国において経営史に関する専門の学会である「第3回中国企業史ワークショップ」での報告であり,「安定成長期における中小小売業の事業転換」という論文について報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以上のように,2021年度は2本の学術論文を作成し,投稿したが,いずれもまだ掲載されていない。2回の学会報告を行い,その内英語での報告内容を踏まえて英語論文を作成したが,更なる文章の修正が必要であり,投稿可能な段階には至っていない。また,新型コロナの関係で,当初予定していた資料調査や現地での聞き取り調査も予定を変えざるを得なくなり,資料の発掘と聞き取り調査により論点を深掘りすることができなかった。以上の理由により,2021年度の研究課題の進捗はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,2021年度に投稿した論文を修正し,刊行することを目指す。その内,「戦後日本における零細小売商の家族経営と商業婦人の役割ーー1950年代後半から1980年代初頭を中心に」という論文は,経済史・経営史関係の学会誌に投稿中であるが,3回の修正を経て現在掲載決定の直前段階に来ている。2022年度は,これらの論文の修正を完結させながら,新たな論文を執筆する予定である。2021年度内には,「The Decline of Small Retailers in Japan after the mid-1980s」という題目で英語論文を執筆し,European Business History Association 25th Annual Congressに応募し,採択された。当該論文は,課題の焦点である零細小売業の衰退に直結するものであり,本研究課題の最終成果として期待している。これに既に2nd World Congress on Business Historyで報告した英語論文を加えて,2本の英語論文をさらに修正し,英文ジャーナルに投稿する予定である。そうした論文の執筆と修正に当たって,2021年度には新型コロナの関係で実施できなかった資料調査やフィールド調査を再開し,論点を掘り下げていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は,既に投稿した論文の修正や新たな論文執筆のため,更なる資料調査と聞き取り調査が必要である。その実行のために旅費が発生すると想定される。また,研究の展開において,図書資料購入日,研究補助作業に関わる謝金,英文校正費なども必要となる。そうした理由により,2022年度は2021年度以上の経費が必要であると考えられる。 研究課題の最終年度として,更なる研究活動の展開のために,2回の資料調査と4回の聞き取り調査を予定しており,そのためおよそ70万円の旅費が発生すると予想している。それ以外に,資料図書の購入が40万円,研究補助業務の謝金が30万円,英文校正の費用が30万円,その他の支出が20万円あまりを想定している。年度の前半は主に資料調査と聞き取り調査を中心に研究活動を展開するため,旅費の支出が多いと想定される。後半は主に資料と調査結果の整理の作業を行うため,図書資料費や謝金,校正費の支出が多いと考えられる。なお,全体の研究進捗がやや遅れていることもあり,2022年度に以上の執行計画が実現できない場合は,研究期間の延長も視野に入っている。
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