研究課題/領域番号 |
20K13542
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
林 彦櫻 弘前大学, 人文社会科学部, 助教 (90846354)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 零細小売業 / 女性労働 / 事業転換 / ボランタリー・チェーン |
研究実績の概要 |
林彦櫻は2022年度に研究課題である「零細小売業の衰退に関する歴史的研究」をめぐって,主に2本の論文を刊行し,また2回の国際学会の報告を実施している。刊行論文のうち,「戦後日本における零細小売商の家族経営と商業婦人の役割ーー1950年代後半から1980年代初頭を中心に」は査読付論文で,経済史の全国学会誌である『歴史と経済』で刊行している。もう一本の論文は,「安定成長期における中小小売業の事業転換」をテーマとし,弘前大学人文社会科学部紀要『人文社会科学論叢』で発表している。国際学会については,「The Decline of Small Retailers in Japan after the mid-1980s」という題目でEuropean Business History Association 25th Annual Congresssで報告した。また,零細小売業の衰退と関連するテーマとして「The Voluntary Chain Policy in Japan's High-growth Period」をテーマに「Industrial Policy and Technology Transfer in East Asia during the Cold War: A Comparative History」という国際ワークショップで報告した。これの研究実績は本研究課題をめぐってこれまで展開してきた研究活動の重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,昨年予定している論文の刊行や学会発表が実現されたため,研究計画が比較的順調に進んでいる。刊行論文のうち,一本の論文が日本における経済史・経営史関連の三大誌の一つである『歴史と経済』で査読付論文として刊行されたことは,本課題の研究成果が学会で評価されることを示している。また,研究報告はいずれも国際学会での報告であり,本研究の成果を国際的に発信する取り組みである。さらに,本研究課題のテーマである零細小売業の歴史的研究を進めていくうちに,研究対象を中小小売業やボランタリー・チェーン等に拡張することで,戦後日本における小売業の歴史を中小企業の観点からより立体的な全体像を描くことができるようになった。以上の進捗状況から,2022年度本課題の研究活動はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,以上の研究成果を踏まえ,研究のさらなる深化に努める予定である。具体的には,これまでの研究であまり分析できなかった流通政策の影響について研究を進め,特にボランタリー・チェーン政策の展開について2022年度の学会報告をベースに論文を作成する予定である。また,これまでの研究成果を整理して体系化し,単著の作成に向けた準備を進めることが最終年度の最大の目標である。単著の草稿がある程度取りまとまった時点で出版助成を申請し,研究課題終了後に単著を出版する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題は,コロナによる調査の遅延のため,当初の予定より一年間延長した。それに伴い,2023年度には調査を再開し,前年度に支出しなかった経費を利用する予定である。また,新しく作成するボランタリー・チェーン政策に関する論文や,執筆している単著にも追加した資料と調査が必要であるため,経費の支出が発生する見込みである。
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